国境を越えた世界に発信できる教訓だが、福島の風評被害で明らかなように、日本国内で生かされていない。半世紀にも及び泥沼化した水俣問題の原因は当時の社会環境であることを、更に多くの日本人に啓蒙していくことだ。社会構造や風潮を正さなければ、こうした問題は今後も続くことになる。
水俣病の教訓、後世へ 学園大で国際フォーラム
世界各地の環境汚染を検証し、水俣病の失敗の教訓を後世にどう発信するかを探る「環境被害に関する国際フォーラム」が5日、熊本市の熊本学園大で始まった。8日まで。初日は国内外の8カ国・地域の環境汚染の被害者や研究者らが、被害の実態や地域社会への影響などを報告した。
水俣病公式確認50年の2006年に続き、2回目の開催。解決にほど遠い水俣病問題の現状を踏まえ、国境を越えた継続的な交流や発信をするために、同大水俣学研究センターなどが企画し、約120人が参加した。
水俣病問題に長年かかわる丸山定巳・同センター顧問は、講演で原因企業チッソや行政の責任に言及。「海の汚染を地域全体の問題と捉えなかった社会構造が、水俣病発生の原因。排水を規制しなかった国やチッソの責任は非常に重い。行政は被害者確定に必要な全体調査すらせず、補償はいまだに終わっていない」と述べた。
カナダ・オンタリオ北西部の先住民の女性2人は、1969年に表面化したパルプ工場の水銀汚染について説明。「政府の健康調査を受けたが、結果すら届かない。将来の世代への影響をみるために、長期間にわたる調査が必要だ」と訴えた。
タイの工業団地の大気汚染や、台湾・安順のダイオキシン・水銀の汚染では、責任逃れを図る政府対応や胎児への影響など、水俣病との共通点を指摘する報告もあった。
6日は午前9時から。水俣病や海外の被害者らが、補償問題の現状や課題を話し合う。(鎌倉尊信)
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