すでに半世紀以上を費やしたが、今日に至っても認定基準をめぐって合意に達していないという。
原因企業とそれを擁護してきた政府に加え、当時の社会環境がもたらした風評被害。戦後復興の大きな波の中に水俣病被害者の多くは葬られてきた。環境の変化に伴い、政府や原因企業の対応が大きく変わったとはいえ、いまだ「認定基準」をめぐって紛争中だ。
水俣病認定在り方統一へ 最高裁来月16日判決
水俣病の認定申請を棄却された水俣市と大阪府豊中市の女性2人の遺族が、熊本県に水俣病と認定するよう求めた2件の訴訟で、上告審の口頭弁論が15日、最高裁第3小法廷(寺田逸郎裁判長)であり、結審した。水俣病の認定の在り方をどう判断するか注目される判決は、いずれも4月16日。
最高裁が弁論を開く場合、二審判決を変更するのが通例。手足先の感覚障害と他の症状の組み合わせを求める国の認定基準をめぐり、2件の高裁判決は是非の判断が分かれている。水俣病認定の在り方について、最高裁は判決で統一した判断を示すとみられる。
口頭弁論で豊中市の女性側は、1977年に旧環境庁が通知した現行基準を「医学的根拠はなく、不合理。迅速に処理するために画一的な基準を設けたにすぎない」と否定。「被害者の救済を図る公害健康被害補償法の趣旨に照らし、水俣病かどうかを司法が行政に代わって判断すべきだ」と主張し、逆転敗訴した大阪高裁判決の破棄を求めた。
福岡高裁で逆転勝訴した水俣市の溝口秋生さん(81)側は同様の主張で県の上告棄却を求め、「数多くの不正、違法を繰り返して患者を切り捨ててきたのがこの半世紀の水俣病行政だ。是正できるのは最高裁しかない」と強調。溝口さん本人も「高裁判決をそのまま認め、早く私の苦労を終わりにしてください」と訴えた。
一方、県側は認定基準について「迅速、適切な認定のため、当時の医学的知見を踏まえて策定され、今も合理性がある」と主張。「行政訴訟での司法審査は、認定基準に不合理な点がないか、認定審査に看過しがたい誤りがないかという観点から行われるべきだ」と指摘し、福岡高裁判決の破棄を求めた。(小林義人、渡辺哲也)