山村明義の神代のブログ 2012-10-16 を転載

北朝鮮による拉致被害者は、GHQ戦後体制の「最大の犠牲者」だ!

小泉政権下で、北朝鮮による拉致事件による5人の被害者が日本に帰国して10年。その後、被害者家族の一部は帰国したが、現時点に至るまで、北朝鮮から拉致被害者はいまだ戻ってきていないのは周知の通りである。

実は私は、この10年ずっとこの拉致問題を取材してきた。詳しい理由は後で述べるが、この拉致問題こそが、うまく行けば日本の「戦後体制の総決算」となり得ると確信してきたからである。

最近でも、民主党政権下で拉致被害救出に取り組んできた警察庁関係者に会い、裏話を聞く機会があった。民主党政権は、今回の田中慶秋法務大臣で実に7人目の拉致担当大臣を迎えるが、拉致被害者の救出は、北朝鮮が金正恩総書記体制となって「今年が最大のチャンス」と言われながら、一向に進んでいないかに映っていた。ところが、関係者によれば、この「最大のチャンス」が松原仁前国家公安委員長時代に訪れていたという。それは、デビィ夫人やアントニオ猪木といった著名人による「微笑外交」や、右翼や坊主に至るまでありとあらゆる人脈を使って、北朝鮮に接近した「釣り堀」という手法だった。最後に登場した藤本健二という金正日前総書記の料理人と呼ばれた人物が、本命の「ヒットマン」だったわけだが、藤本氏は一度目の訪朝に成功した後、二度目の親書を持った訪朝の際に、北朝鮮に入国できずに、その目的は潰えた。

その原因は、「外務省内部から入国情報をリークしたからだ」というのだが、その情報は外務省だけでなく、法務省や警察庁からも漏れていた事実を私自身が確認しているから、真相は足の引っ張り合いだ。

拉致事件は、言うまでもなく北朝鮮の日本への侵略行為である。普通の国なら軍事力で奪還されても仕方がない悪辣な行為だ。この10年間、軍事力を含むあらゆる「力」を肯定してきた北朝鮮は、この拉致事件に関してあらゆる情報網を駆使して、日本側の対応の変化を見極めてきた。一方、民主党政権は、その左翼リベラル的な体質から「強硬外交」は影を潜め、拉致を朝鮮総連などを相手とする「話し合いによる平和的解決」を目指した。民主党政権の軟弱な姿勢のため、北朝鮮から小泉政権時に約束したとされる「約1兆4千億円」という国交正常化の際の巨額の「賠償金」や、その前段として北朝鮮に眠る日本人の遺骨収集のための「一体300万円以上」というとてつもない資金援助を水面下で要求されている。

結局、事なかれ主義と利己主義が蔓延した日本は、北朝鮮からずっと「金しか能がない存在」として足下を見られ続けてきたのだ。さらに、戦後の左翼マスコミを中心として、「拉致事件は平和的に解決すべき」という外交路線や、省庁の縦割りという、戦後日本体制下の弱点がそれに拍車をかけた。

戦後日本の事なかれ主義と左翼リベラル主義、そして日本外交の軟弱外交は一貫している。北朝鮮から見れば、拉致問題に当たる日本政府は、例え政権が何党であろうといつまでも解決せずに攪乱し、分断するには絶好の体制であった。その証拠に、拉致問題の解決に絶対に必要な「拉致被害者の救出」という仕事に、日本の軍事力を担う防衛省は10年間、全くタッチしていない。「軍事」そのものを拒否してきたそのツケが回り、最初から諦めているのだ。だからこそ、拉致問題を解決しようとすると、必ず警察庁と外務省、公安調査庁などの縄張り争いという内部の「情報戦」が始まり、最終的に一度も解決の道筋がつけられなかった。

この弱体化した戦後体制を一体誰が決めたのか。それはGHQである。GHQは、日本の旧陸海軍をまず完全に解体した。その後も「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼」するなどという、中国や韓国を含めた世界中にありもしない嘘八百の憲法9条に縛られた防衛省は、軍事を伴う拉致被害者の特殊救出作戦など、ただの一度も実行出来なくなった。また外務省は、吉田茂や幣原喜重郎のおかげで漁夫の利を得たが、戦後の左翼リベラル路線に基づく柔軟外交一辺倒で、交渉には力がなく諦めに似たムードが漂っている。さらに今回から、拉致問題を担当するという法務省は、所轄の公安調査庁がGHQから治安維持法を取り上げられており、拉致問題に深く関わった朝鮮総連を潰せなかった。一貫して北朝鮮から煮え湯を飲まされてきたにもかかわらず、朝鮮総連を頼りにするしかないような組織である。その法務省と、拉致被害者家族を「遺族」と語るような、国内では外国人献金を含むスキャンダルまみれの田中慶秋大臣が今回担当になったからと言って、どうして本当の解決の糸口が作れるだろうか。

このGHQの戦後体制の最大の犠牲者が、北朝鮮に残っている横田めぐみさんら拉致被害者だ。そして、これは私自身にも言える教訓だが、拉致事件を解決するための最も強力な具体的方策とは、「日本人全員が日本の戦後体制では、拉致問題は絶対に解決しないという真実に気づくこと」だったのだ。実際に私は多くの拉致被害者や家族と会ってきたが、かつて蓮池薫さんの兄・蓮池透さんが私のインタビューで、「本当は日本人自身が戦後体制のぬるま湯に浸かりすぎて、何が何でも解決しようとする本気になれない姿勢と全体の雰囲気こそが最大の問題なんだ」と確信をもって語っていたことがいまでも忘れられない。この際、ハッキリ言っておくが、日本に「軍事力」という背景がなければ、「平和的解決」などあり得ないのが、この北朝鮮による拉致事件の本質なのだ。

何度でも繰り返し言おう。日本人よ、目覚めよ!横田めぐみさんら北朝鮮による拉致被害者は、GHQの戦後体制の最大の犠牲者だ。あなたたち自身がGHQ体制を受け入れることは、横田めぐみさんらを最後まで見殺しにする行為である。一刻も早く、日本はこの戦後体制の弱体化思想によるぬるま湯から脱し、日本人自身の手によって拉致被害者を奪還すべきなのだ。

 
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