山本善心の週刊木曜コラム〈385号〉 を転載

元スパイが語る中国の真実(上)

時局心話會 代表 山本 善心

原博文氏は日本に帰化した元中国人である。著書「私は外務省の傭われスパイだった」を拝読し、衝撃的な内容に日中間の物の見方、考え方の違いをあらためて認識した。氏は中国の各界各層の実力者らと接触を持ち、中国の情報を日本の外務官僚らに提供したスパイであった。氏の考え方は新鮮で激烈である。しかも普段の情報からは想像もつかない発想、切り口で本質を突いてくる。

〔原博文氏の経歴〕
1965年10月、中国黒竜江省佳木斯市に生まれる。母親が残留孤児であることが分かり、1991年9月父母らとともに日本に帰国し、長野県に居住。1994年、東京で日中経済新聞社を創設。1996年6月北京空港で中国国家安全省に身柄を拘束され、裁判で国家機密許取罪などで懲役8年の実刑判決を受ける。2003年1月、釈放され日本に帰国。現在は東京に在住し、アジア民主化活動の促進をしている。同時に新聞復刊を準備中。

〔対談〕
山本)
本日は、日本外務官僚のスパイとして活躍された元中国人の原さんに日中間の本音のお話をお伺いしたいと思います。

近年、中国は急速な経済成長を続け、いまやGDPは世界の第二位となりました。中国は実に宣伝の上手い国で、「実力以上に経済大国」を世界に喧伝しているような気がします。けれどもいまやバブルが崩壊し、企業の倒産も増え、物価は上がり庶民の生活を圧迫しています。中国は本当に経済大国だと言えるんでしょうか。

原)
中国政府は、自分たちを経済大国とは誰も考えていません。国内の中国人は「こんなに貧しくてどうする。我々はもっとがんばらなくてはならない」など、その日暮らしが多く、発展途上国と同じか、それ以下の生活ぶりです。しかし、有る人は、中国が早めに軍事強国になることを希望し「世界中の資源を独占する」と、傲慢な態度で弱い国々から資源や領土を収奮したいと言っています。
一方中国経済の危機は、欧州の経済危機や米国の経済破綻など、様々な要因が複雑に絡み合って引き起こされています。国内の経済構造が複雑で、コントロールできないこともあります。

かつて西方列強は重商資本主義から工業資本主義、金融資本主義の三つの段階で発展しました。この三つの段階は同時に改革開放時代に現れたので内部構造が混乱しています。中国経済は、いまや一部の富裕層が90%以上の貧困層から搾取するだけの体制と仕組みになっていて、ますます経済格差が拡がっているんです。

中国進出企業の8割は赤字

山本)
太子党や軍、共産党幹部らが富を独占して貧困層を圧迫しているんですね。庶民の不満が一年に10万件のデモにつながっているとも聞きます。これだけ不安を持つ人民が共産党を倒す暴動に発展する可能性はあるんですか?

原)
どれだけ暴動があっても政府を倒す力にはならないでしょう。実際、共産党は中国内部の資金だけでは政権を運営できず、外資によって支えられているんですよ。中国共産党は中国に投資する外国企業から管理費や税金などの名目で資金を調達しています。実は、中国に投資している外国企業で利益をあげているのは3割程度で、残る7~8割は赤字です。

山本)
実は、電化製品、自動車を始め中国に進出している日本企業の中でも、利益をあげてきた企業が苦戦し始めたと聞いています。月収2千元(日本円で2万4000~3万円程度)で庶民の家計は苦しいと聞きます。しかも、中国国内の失業率は高く先が思いやられます。中国はこれまで元をどんどん印刷して、昨年は50兆円もの財政出動を行って、空港や鉄道、道路、発電所、新幹線など公共工事で何とかやりくりしてきました。けれども公共投資が終わると仕事がなくなり、庶民の生活の負担が大きくなるので次の景気対策を早く打たないと大変なことになりますね。

原)
いまの物価高騰は異常です。給料は上がらず、貯金もなく、庶民の生活は苦しくなる一方です。一握りの権力者らが利権や外資をバックに私腹を肥やしてきましたが、これからは絞り取るものがなくなって、共産党内部が混乱に陥るのは確実です。

山本)
解放軍はたくさんの戦闘機や空母、潜水艦を作ったり、軍拡を続けていますが、庶民の大多数は貧困なんですね。これじゃ国としてアンバランスで大義もなく、永続きするんですか。

原)
国民の1割にも満たない富裕層が残る9割の庶民のお金を搾取して軍備増強をしたり、海外に投資するのが中国の現実だと言いましたが、1960年代、国にお金が全くないときにも原子爆弾を作っていました。そういう国なんです(笑)

中国政府はいま欧米、ロシアの問題を上手く利用して、三方ぶつかるところで仲介に乗り出したり、自分たちの利益のためにうまく外交を使っています。国民から取るものは取り、さらに海外の弱い国からもどんどん絞り取ろうとしている。この十数年はアフリカでの動きも活発になった。だから中国外交は日本より全然上手なんですね。中国資源外交もバイ菌がどんどん繁殖するように果てしなく増殖していくんです。

南シナ海も狙っている

原)
たとえばですね、第一列島線、第二列島線を勝手につくって、「自分の領海だ」と勝手に主張していますね。尖閣諸島もそうです。国際的に宣伝されると日本も外国の人も「あれは中国にも権利がある」と錯角します。それが既成事実化していくでしょう。資源にしても中国政府は北朝鮮に埋蔵する鉄鋼や石炭など7割以上の地下資源を50年から70年間かけて採掘し続けています。

山本)
それが世界のあちこちで起こった場合、中国に対する牽制とか包囲網はどうなりますか。日本として中国経済が崩壊することは困るし、かと言って勝手に無秩序に資源外交をやられるのも良くない。私たちは中国人を正しくコントロールする戦略が必要ですが、そんな外交能力は全くありません。

原)
中国では人民の共産党への不信が続いていました。そのため、彼らは外国の敵をつくって人民に愛国心を蘇らせることが必要だったんです。そのために持ち出されたのが南シナ海と尖閣は格好の標的でした。何の根拠も権利もないのに、あるかのように主張して、相手がひるむと漁船を繰り出し、次は解放軍がくると威嚇して譲歩させてきました。他に中国は自分らが核武器を持つことや宇宙開発能力を自慢し、他国に威嚇していますが、まるでこれらは中国の覇権主義丸出しですね。

山本)
これまで領土も歴史もみんな口から出任せなのは、中国や韓国内の権力争いや地域紛争が激しく、時の大統領は国をまとめるために外敵を作る必要があったんですね。その敵が日本であり反日政策だったわけですよ。

中国が「台湾はわが国の領土だ」『尖閣は中国の領土だ』など国民の目を外にそらそうとしてきました。このことを中国の国民は分っていますか?

原)
真実をわかっているのは1割にも満たないでしょう。国民は無知ですから訳も分からず騒いでいるだけなんです。(笑)

山本)
今後政治に対する不満が大きくなれば、政府打倒に向かう可能性はありますか。

原)
現在、実際に共産党を叩く人間はいません。もし、そうなれば金持ちはみな海外に(資産を持って)逃げてしまうでしょうね。逆に、既存のメディアの報道がデタラメだったと国民の9割が真実に気付いたら、すでに目覚めていて行動しない1割よりはるかに大きな力になるのは理解できるでしょう。現在の共産党は国民に、「日本を憎め」と言わせ、彼らに憎しみを育てる教育をしてきました。しかしですね、自分たちを騙した人民の9割がこれに気付けば、共産党に向かう憎しみの力は計り知れないエネルギーになります。

山本)
9割は何をきっかけに目覚めるんでしょうか。

原)
海外メディアなどがきっかけになるでしょう。いかに共産党に騙されていたのか、早く目を覚ましてもらいたいですね。ところがですよ、日本政府やメディアが中国のウソに同調していることが問題です。

正しい歴史認識の醸成には民間の力が不可欠

山本)
たとえばですね、中国は南京大虐殺で30万人が殺されたなど、ありもしない事実をでっちあげ、記念館までつくって大宣伝をしています。当時外国人記者も大勢いましたが、誰も虐殺場面を見ていない。それについてはどう考えますか?

原)
歴史のことを日中間で話し合おうとしても、話し合いを拒否する中国政府の姿勢は大人の対応ではありません。歴史とは真実の追求が大切なんですが、中国の歴史観は真実とは違う作られたものだから議論のしようがないでしょう。(笑)

山本)
日本では歴史認識の発言を政治がすると関係者が一斉に否定します。それを受けて、中国のスポークスマンが、それみたことかと『中国は怒ってるぞ!』と追い打ちをかけるのが定例化しています。日本人が正しいことを言っても日本の政府が潰しにかかる。日本の歴史観は日中の共同作品じゃないですか。(笑)

原)
真実は世の中には出ません。どの国の政府も国益と面子を考えて都合の良いストーリーしか考えないからです。だからこそ、民間レベルで資料や情報を提供し、証拠を残す活動をすれば歴史問題は変わってきます。

山本)
いまは中国が強い立場で、日本政府が隷属外交をしているので、政府間での正しい歴史の解明にはほど遠いというわけですね。原さんの言うように民間の力で当時を正しく伝える資料を残していく作業をしないと、この先本当の歴史が見えなくなりますね。

原)
中国も韓国も、自国に都合のよい歴史の改竄で政局をコントロールしてきましたからね。こんなこと、今に始まったことではありません。

(次回に続く)