東京電力の家庭向け電気料金値上げに関する新聞報道
企業向けの電力販売量が全体の6割を占めているが、利益面では家庭向けが9割を占めていることに対して、「企業向けの競争が、家庭にしわ寄せされている形だ」と締めくくっている。
企業向けの電気料金は自由化されているため、各電力会社が状況に応じて価格を設定している。一方、家庭用の電気代は固定されている。ここに目をつけてもっともらしく批判しているのだ。丁寧な表まで添付すれば、家計を案ずる多くの人たちが同調するだろう。
だが、消費して終わる家庭用エネルギーと、生産のためのエネルギーを同列にすること自体が間違いだ。企業向けエネルギーは雇用を維持し新たな生産により利益と外貨収入を得るのだ。そして新たな税収を生み出す。価格優遇されてしかるべきだろう。企業が積極的に事業展開できるよう配慮するのが政治の役割だ。雇用と利益が社会を潤わせるのだ。。
こうした報道が、世論を誘導し、社会問題化させていく。報道は受信するだけではなく、検証する感覚を養うことが重要だ。
東京新聞 2012年5月23日を転載
東電利益 家庭から9割 電気料金審査委販売 量は4割弱
東京電力が申請した家庭向け電気料金の値上げの妥当性を検証する経済産業省の審議会「電気料金審査専門委員会」(委員長・安念(あんねん)潤司中央大法科大学院教授)は二十三日、東京電力などの全国の十電力会社の収益構造を明らかにした。東電の販売電力量の六割は企業など大口利用者向けだが、利益の九割は家庭向けで上げていた。
全国平均でも傾向は同じで、家庭向け料金が企業向けより、大幅に割高になっている実態が初めて明らかになった。経産省が全国の電力会社の二〇〇六~一〇年度の販売電力量や電気事業利益などの比率をまとめた。東電管内では年度平均で、企業向けの販売電力量が千八百一億キロワット時で全体の62%を占め、残り38%の千九十五億キロワット時が家庭向けだった。一方で、利益は家庭向けが千三百九十四億円と全体の91%も占め、企業向けは百四十三億円とわずか9%だった。
この日の審議会で、東電の高津浩明常務は企業向けの利益が少ない理由について、「新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の全号機停止や燃料価格の歴史的な高騰で、燃料費の比率が相対的に高い(企業向けの)自由化部門の収支が悪化したため」と釈明した。
全国でも、企業向けの販売電力量が全体の62%を占め、家庭向けが38%だったの対し、利益は家庭向けが69%を占め、企業向けは31%にとどまった。
企業向けの電気料金は自由化されており、電力会社は自由に価格を設定できる。小売りの新規参入者の特定規模電気事業者(PPS=新電力)などとの競争で、販売価格を下げたため、利益幅も少なくなっている。
一方、家庭向けは電力会社が各営業区域で販売を独占している。電気料金も発電にかかる費用に利益を上乗せできる「総括原価方式」に守られ、経費削減で身を削らなくても安定的な利益が得られる構造になっている。企業向けの競争が、家庭にしわ寄せされている形だ。