「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24年2月10日(金曜日)通巻第3553号 を転載

米比が合同軍事演習、中国の南シナ海の脅威にそなえて
中国はフィリピン制裁を示唆し、アキノ政権を恐喝するが

フィリピンのアキノ大統領一家は華僑の末裔、御先祖は福建省出身である。マルコス政権瓦解以後、フィリピンの政権はいくたびか交替したが、いずれも親米、そして親中路線だった。
しかし南シナ海の海底油田の利権をめぐり、中国はフィリピン領海のパーセル礁をさっさと軍事占領し、フィリピン側には哨戒艇ほどの海軍力しかなく、腹に据えかねながらもじっと耐えた。もとはと言えば米軍がスビック湾から撤退したためである。中国は軍事力の真空状態をみて、さっと軍を派遣したのである。

ベトナムは自国領海が中国海軍に犯されたとき、果敢にも軍事行動に出たが、18名が殺害され、そのまま中国海軍が居座っている。
この屈辱からベトナムは宿敵米国と突如仲直りをする。米軍の空母寄港を歓迎する。
ともかくベトナム沖の南沙諸島の珊瑚礁に中国軍工兵隊はコンクリートを流し込んで部隊を駐屯させ、いつの間にか滑走路まで中国は建設し、ブルネイ、台湾、マレーシア、インドネシアの権益を侵したまま。

日本領海にも中国はしゃあしゃあと海底リグを四基建設し、白昼堂々とガスの盗掘を繰り返し、日本の抗議には「ここは中国領」と嘯いたままである。

軍事力のない日本も中国の侵略に抗議も出来ず、すっかり腰がひけた。このままいけば、次は尖閣諸島を間違いなく盗みに来るだろう。
アジア諸国は日本の頼りなさに絶望してきた。

▼四面楚歌に周章狼狽した中国だが反射的な対応も早かった

オバマ政権がようやく中国への軍事的対峙を鮮明にした。
昨秋のASEANにおいて、米国は海兵隊の豪駐留にくわえ、インド、ベトナムとの軍事演習再開、そしてフィリピン海軍との合同演習を打ち上げた。

雰囲気の激変に中国は四面楚歌となり、温家宝首相は驚き、かつ狼狽した。米国の対中政策の変化を肌で感じ取った。だからこそ予定になかった習近平がにわかに訪米することになった(2月13日から訪米する)。米国各地で習は多大の演出を施し、中国の悪イメージを改善しようというわけだ。

さて米比軍事演習と聞いて中国はフィリピン側を恐喝する。環球時報(人民日報の傍系)は、「もしフィリピン側が北京に楯突くのなら、われわれは制裁を加えるだろう」という意味のことを書いた。「領海は中国のものであり、中国は国際社会の秩序に従い、平和を希求しているのだ」という修辞も忘れずに付け加えたが。。。。

米比合同軍事演習は三月下旬から四月上旬にかけて当該海域で行われる。

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