「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)5月8日(日曜日)通巻第3321号 を転載

冷ややかに反応した中国。「ビン・ラディンの次、米国の標的は中国では?」

テロ戦争で米中はイスラム過激派を本当に「共通の敵」としたのか?

ちょうど中国にいた。
中国の全てのマスコミの一面トップは「本拉登の死」である(本拉登はビン・ラディン)。
克明にパキスタン領内のビン・ラディンの豪華な隠れ家を米特殊部隊が襲撃した模様を図解しつつ、報じた。論評抜きだった。
しかも中国の同盟国であるパキスタンの主権を無視して行われた米軍の行動に批判の論調はなかった。空母カールビンソンに遺体を運びDNA鑑定後、水葬したとほぼ米国の発表通りに伝えていた。

しかし喝采もなかった。
中国は米国のテロ戦争の成果をたたえたが、一切の熱気も同情もなく、淡々と軍事行動を報道しただけだったのである。

中国は新彊ウィグル自治区の独立をさけぶイスラム原理主義者らをテロリスト呼ばわりし、米国のテロ戦争に同調し、イスラム系の東トルキスタン独立運動への抑圧、血の弾圧の正当化の武器としてきたが、米国が、中国のやり方に冷ややかな態度を示してきたことを知っている。

それもこれもビンラディンをしとめるまで、米国は中国の協力を必要としたからである。
だが「ポスト・ビンラディン」時代となると、これ以上の中国の軍拡ならびにアジアにおける露骨は覇権には反発を強めるはずだろう、と多くの政治分析家はみている。

「米国は中東のゲームを、収拾する方向に舵取りを変え、リビア問題はNATOに任せ、シリアの非人道的弾圧にも、たいした批判をせず、じつは911犠牲者への追悼儀式を終えてからのオバマ政権は「次の標的を中国に照準を合わせているのではないか」とする猜疑心が広がっている」(アルジャジーラ、5月6日)。

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