「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)4月14日(木曜日)通巻第3301号を転載

その後の中東、北アフリカ異聞。EUは新しい対応に迫られた
対岸の仏伊に自由を求めて多くが移民、EUはヴィザを検討へ

チュニジアから地中海を渡海すれば、イタリアの島々が見えてくる。
チュニジアを脱出した人々はイタリア領内の一番近い島を目指したが、悲鳴をあげたのはイタリア当局。人権の立場から保護せざるを得ないが、一時的避難かとおもえばEUに潜り込んで就労のチャンスを狙う人々が目立つ。

イタリアのランベドウザ島へ漂着できたチュニジア人は二万三千人を越えたが、他方、船が沈没などして漂流し、行方不明が数百から数千とも見積もられている。

フランスはチュニジア難民ならびにイタリアの国境をこえて入ってくる『難民』を片っ端から追い返し始めた。
フランスが追い返したチュニジア難民はすでに1000名。

これはイタリアが一度受け入れた難民を、さっさとEUのほかの国々へ出国させているからで、フランスとドイツは、このイタリアの遣り方に不満を抱き、無制限受け入れに難色を示している。
イタリアは難民暫定VISA発給をEU議会に提出する構え。

リビア内戦が始まった
海へ逃れたリビア難民は急ごしらえ、安物の船だったためか数万が海のもくずと消えた。命からがらイタリアの島々へたどり着けたのは幸運だった。
西のチュニジアへ数十万、エジプトへは百万以上のリビア難民が発生した。フランス、イタリアなどはテントを大量におくって難民テント村をつくり、食料援助をつづける一方で、かれらがEU上陸を阻止する防御態勢を敷いている。

しかしイタリアには移民排斥をさけぶ愛国陣営『北部同盟』が勢力を伸ばしており、ベルルスコーニ政権も政治的立場は移民排斥に組みせざるをえない。だから「時期が来れば難民には帰国して貰う」としている。

フランスが難民送還に積極的なのはサルコジが右派「国民戦線」に追い上げられているからだ。
EU議会はチュニジアなどへ二億ドル援助増加と引き替えに難民送還を強化しようとしている。
かくてEU27ヶ国は、新しい難題に直面し、意見が分かれ、鋭角的対立を示してきた。