「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)3月25日(金曜日)通巻第3282号を転載

CIAが確認
ビン・ラディンはアフガニスタンのジャングルで過激軍事組織と会合

ヘクマチアル(元アフガニスタン首相、武装グループ首魁)と会合した証拠

CIA高官が掌握した秘密情報をアジアタイムズがすっぱ抜いた(同紙、3月25日付け)。
サウジアラビアとパキスタンの情報部(複数)が同様な機密情報をもたらし、CIAが追跡調査したところに拠れば、アル・カィーダの首魁=オサマ・ビン・ラディンはアフガニスタンのジャングルで、ヘクマチアルと秘密会合を重ねていたという。

2001年911テロ直後、ビン・ラディンはアフガニスタンの山岳地帯トラ・ボラで所在が確認されて以来、およそ十年、消息を絶った。
現在54歳、米国が賭けた懸賞金は5000万ドル。いまも無人偵察機などを飛ばして行方を追っている。

数週間前である。
アフガニスタンのクナル群とバジウル群の県境にあるジャングルで、ビン・ラディンがヘクマチアルと秘密会合をもち、広範な軍事作戦について話し合いを持ったとする情報がもたらされた。

ヘクマチアルはソ連の侵略に対抗したジハードを戦った武装グループの首魁であり、タリバン政権下では初期に首相も務め、やがてタリバン、北部同盟と対抗し、主流派に反旗、一時はイランへ逃れた。アフガニスタンで少数派だが、ヘクマチアルが率いる武装勢力はHIA(ヘズブ・エ・イスラム)だ。

世界を揺るがす、この機密情報はHIAの内部から北ワリジスタンにいるパキスタン軍情報部にもたらされ、サウジ、アフガニスタン、パキスタン内部部など複数の情報機関が確認し、CIAも追認した。

ヘクマチアルは、92年から95年にビン・ラディンがスーダンに隠れて軍事組織を作ったときも緊密に連絡を取っていた。両者は持ちつ持たれつの関係であるという。

▼基本路線をめぐる対立?合意?

何が話し合われたかは知るよしもないが、アジアタイムズは、「これからのイスラム全域を巻き込む軍事、思想闘争の基本路線に関して」ではないか、という。

アル・カィーダの過激路線のイデオローグ=ザワヒリは西側世界を相手に聖戦を完遂せよと主張し、アフガニスタンで訓練を受けた過激テロリストがチェンチェンに散り、あるいはNYの911テロ、その後も各地でテロを繰り返した。

しかし80年代のイスラム聖戦のイデオローグはザワヒリではなく、イスラム理論家として尊敬されていたアブドラ・アザム博士だった。
アザムは西側との戦闘はともかく、イスラム世界での反政府暴力には反対していた。アザムは89年にパキスタンで暗殺され、爾来、過激テロリズム思想はエジプト人の博学理論家のザワヒリが主導した。

この基本路線の二重回路が輻輳してきたが、この武装闘争の理論を継続するか、どうか、あるいは新路線を打ち出すのかを含めての議題だったとアジアタイムズは推定している。

CIAはアル・カィーダの動きの変化、その予兆に注目しつつも同時にビン・ラディンの居場所を探索する新しい道筋を得た。

近未来、何かがおこる?