西村真悟の時事通信
No.577平成22年12月15日(水) を転載

台湾Formosa

十二月九日から十一日まで、台湾の台北、士林そして淡水を訪れてきた。
この度の訪問は、西村塾が企画し同志三十一名と共に訪問した。李登輝前総統とお会いして話を聞くことと、「台湾の日本」を知ることが目的だった。
私の本年の台湾訪問は、四月と十一月と十二月の三度となる。四月と十一月は、ともに台湾の南部を中心にしていたが、この度は北部の台北が主な訪問先だった。

「台湾の日本を知る」また「台湾で日本を知る」
現在、日本人にとって、この二つの課題は非常に大切だ。
何故なら、これは、我が国の歴史の回復に他ならないからである。そして、この度の旅では、李登輝閣下や共に食事をさせていただいた蔡焜燦さんご夫妻と呉阿明さんが、この二つの課題に答えてくださった。
蔡さんは、司馬遼太郎さんが「台湾紀行」で老台北と書いた方で、帝国陸軍航空隊の兵士として奈良で訓練を受けていて終戦を迎えた。そして同じく陸軍将校として内地で終戦を迎えた李登輝閣下と同じ船で台湾に戻った。
呉さんは、大正十三年生まれの矍鑠たる方で、台湾の大きな新聞社である自由時報の会長である。
このお三人の、家庭での日常会話は日本語ではないかと思う。
我々は、このお三人から、日本と日本人を教えられたのであった。

では、何故、台湾で、日本を知ることが必要なのか。
それは、我が国は、中共に勝たねばならないからである。
我が国は、中国共産党の攻勢を跳ね返して我が国の安泰を確保しなければならないからである。
中共の攻勢を跳ね返して我が日本の安泰を確保するとは、即ち、台湾とアジアの安泰を確保すること、つまり「世界の大義」である。

ニューヨークの貿易センタービル爆撃以来、タリバンをはじめとするテロリストの危険性が喧伝され、世界は「テロとの戦い」に入った。その戦いは、ビルの爆破などのテロから安全を守るための戦いである。
しかし、我が国における最大の脅威は、ビルの爆破テロではなく、それ以上の破壊、つまり日本を解体し、屈服させ飲み込もうとする中国共産党の「中華帝国主義」である。
この世界のテロリストの次元を遙かに超えた邪悪な帝国が我が国と台湾の最大の脅威なのだ。

そこで、その邪悪な中国共産党から東を眺めてみよう。
アジアを制覇してアメリカをしのぐ中華帝国に膨張するためには、日本をして中国共産党に屈服せしめねばならない。
日本の屈服無き中共のアジア制覇はあり得ない。
では、その日本屈服のための密かなそして大きな一手は何か、それはまず、日本と台湾の関係を切断して敵対させることである!

よって、以上の中国共産党の戦略のなかに、我が国の尖閣諸島への中共の侵略行為を位置づけねばならない。
もちろん、尖閣を領有して、そこにミサイル基地を設置すれば、台湾と沖縄は掌中に入る、と中共は思っている。
しかし、同時に、尖閣への領土要求を繰り返す課程で、日本と台湾の分断を中共は狙っていることを忘れてはならない。
従って、この度のように、中共が露骨に福建省から漁船(軍艦)を尖閣周辺に繰り出してくることは希であった。
振り返れば、過去に領有を主張して尖閣周辺に押し寄せてくる中国の船は、福建ではなく香港や台湾から出港してきていた。
そして、中共が来年六月に計画している数百隻の尖閣周辺への出撃も、海外の華僑と便衣兵を使った台湾からの出撃であると伝えられている。
明らかに、中共は、台湾から日本が尖閣を奪ったと台湾人に思いこませ、中共と台湾の共通の敵が日本であるという図式を造り、その上で台湾を飲み込もうとしているのだ。

中共の工作員と便衣兵は、東京にも台湾にも何処にでもいる。
東京の我が国政治の中枢は、既に菅と民主党という中共の手下に乗っ取られている。
従って、今も、この中共の日台分断という我が国にとって最も危険な謀略が進行している。
先日の週刊新潮が報じる、民主党議員がこの時期に、喜々として、中国大使の招待ゴルフを楽しむ様は、まさに中共の亡国の対日工作が如何に巧妙かを示している。
ちんぴらは、このようにゴルフで転ぶが大物は隠れて報道されないところで転んでいる。
その転んでいる中には、マスコミも入る。報道されないはずだ。

従って、菅亡国内閣と菅総理に期待するのではなく(これらは既に中共の手下だから)、日本国民こそ、この中共の嘘と謀略に気づいて台湾を注視しなければならないのだ。
その意味で、西村塾の企画によるこの度の台湾訪問は、まさに時宜を得た訪問であり、「日本国民の祖国と友邦台湾に対する愛」に基づく行動であったと自負できる。

次に、台湾とは何かということについて述べたい。

まず第一に、台湾は日本の植民地ではない。台湾は日本の国土であった。
従って、一九四五年の台湾の人口六四〇万人は、皆日本人である。そのうち、二十一万人が帝国軍人・軍属として大東亜戦争に従軍し、三万三千余人が戦没している。人口比から見た戦没者の割合は相当なものである。
事実、この度の訪問で会った、李登輝閣下ら三名の内、二人が帝国軍人であり一人が軍属である。そして、李登輝閣下の実兄はフィリピンで戦死して靖国神社に祀られている。

では、日本は、一九四五年の敗戦によって台湾に関して何を放棄したのか。それは、サンフランシスコ講和条約第二条B項にあるとおり。
「Japanrenouncesallright,titleandclaimtoFormosaandPescadores.」
確かに、我が国は台湾に関して、管轄権・処分権(right)、占用権(title)そして領土宣言権(claim)を放棄している。しかし、台湾に対する主権を放棄したとは一言も書いていないのだ!

では、一九四五年当時起こりえた事態を想起して考えよう。
仮に我が国が、北海道に関するRight,Title,Claimを放棄する事態に陥ったとき、だからといって、北海道に住む人々がその為に日本人でなくなりソビエト人になるのだろうか。そうではない、日本人のままだ。
同様に、日本が負けても、サンフランシスコ講和条約が締結されても、台湾の日本人が日本人でなくなるわけではなく、日本人のままなのだ。
従って、一九四七年二月二十八日の2・28事件以来、いわゆる白色テロで蒋介石が殺しまくった三万人を超える台湾のエリート達は、皆日本人だった。この2・28事件で、どれほど多くのすばらしい人材が、殺されたか。蒋介石は台湾で日本人を殺していたのだ!
李登輝総統も言われた。
「私も今ここにおれたかどうか分からない」と。

以上の事実を踏まえて、私は、十一月の台湾南の竹田で、十一月二十日には大阪の反中国の集会で、十二月十日には台北で、次のように述べた。
「尖閣諸島とその周辺海域は、日本人が開拓した日本の領土であり日本の漁場である。その中に、台湾も入る」
そして、台北では、「蛍の光」の戦後奪われた歌詞、第三と第四を歌った。それは次の通り。

第三番「筑紫の極み陸の奥海山遠く隔つともその真心は隔てなく一つに尽くせ國のため」
第四番「千島の奥も台湾も八洲のうちの護りなり至らん國に勲しく努めよ我が背恙なく」
私が歌い終わると、蔡焜燦さんが、「知らんのか、日露戦争の後で歌詞が変わったんだ」と言って、第四番を歌い直された。
「台湾の果ても樺太も八洲のうちの護りなり・・・」と。

李登輝閣下の言われたことを次に書いておく。

中国は、ただ皇帝のためにのみ存在してきた。五千年間変わらない。これからも変わらない。共産党も国民党も同じだ。
中国とは、自分の利益と財産を殖やすために國を治め、余力があれば他国を支配する。

尖閣は日本のものだ。中国のものだという証拠、何処にあるか。

中国を封じ込めねばならない。その第一の要諦は、中国の嘘に騙されないことだ。

私は、来年九十歳だ。しかし、九十歳になっても、歩けるところまで歩いてデモをする。
馬(国民党の総統)を捨てて台湾を護るためだ。(了)