沖縄は範囲の広い諸島であるためか、それぞれに独自性が強く一体感をもつことが難しい一面がある。尖閣諸島で日々犯されている領土領海侵犯に対して沖縄本島では関心が低いという。米軍基地をめぐって「反戦平和!基地反対!」を声高にしている人たちには、軍事的危機感が高まる八重山地方の訴えが不都合なのだ。一方、県内11市の市議会議長で組織する議長会では、米軍のオスプレイ配備に対する抗議などを盛り込んだ日米地位協定改定を求める意見書を全会一致で可決した。
支那による国家的侵略行為には無関心だが、米軍の事故や兵士による突発的な犯罪に対しては絶対反対という、分かりづらい風潮ができている。尖閣海域が領海侵犯されている事に関しては「国の問題だ」というが、本島の基地問題も同様だろう。いずれも国家と国民が密接にかかわっているのだ。これでは互いの溝は深まる一方だ。
もはや相談している場合ではない、自ら独自の策を講じなければいけないとまじめに考えるようになる。その隙間に介入してくるのが、第三者の工作だ。「琉球独立!」などと地域の分断工作には格好の漁場となるのだ。
危機を乗り切るためには、互いに繋いだ手を離さない連帯感が必要だ。
八重山日報 2013年5月7日 を転載
尖閣問題 本島と温度差 地元の危機感届かず 県市議会議長会
県内11市の市議会議長で組織する県市議会議長会で2月、石垣市議会が、尖閣諸島海域の警戒監視体制強化と漁業支援施設整備を求める決議を提案したものの「各市議会で議論が尽くされていない」として継続審議になっていたことが分かった。議長会事務局によると、議案の継続審議は過去にほとんど例がない。議長会の調査では、その後も多くの市議会で尖閣問題を議論する動きはないという。尖閣を抱える石垣市と沖縄本島で、危機感の「温度差」が浮き彫りになっている。
施設整備決議持ち越し
市議会の決議案では、尖閣をめぐり、中国当局者が「日本の実効支配を打破する」と発言したり、中国公船の巡視活動が活発化していることが「地元漁業者や住民を不安に陥れている」と指摘。漁業者が安心して漁が行えるよう警戒監視体制の強化、船舶気象情報システム設置、尖閣での灯台、避難港設置を求めている。
伊良皆高信議長は2月に那覇市で開かれた議長会臨時総会で決議案を提案。伊良皆議長によると、議案に対し各市の議長は、尖閣海域が領海侵犯されているという現状認識が薄く「国の問題だ」として触れたがらない雰囲気。
わずかに、尖閣海域で漁をする伊良部漁協を抱える宮古島市の議長から、理解を示す発言があっただけだったという。
議長会は3月末、11市の市議会が、尖閣問題をどのように論議しているか調査したが、石垣市を除くほとんどの市議会で議論の動きはないという。
同議案の取り扱いについては8月に開かれる次回総会で改めて審議されるが、伊良皆議長は「石垣市の声が届かない現状にあり、本島との温度差を感じる。可決は厳しいだろう」との見通しを示した。
一方、米軍の新型輸送機オスプレイ配備に対する抗議などを盛り込んだ日米地位協定の抜本的な改定を求める意見書(宮古島市提案)などは全会一致で可決された。
議長会のこうした対応について、石垣市の関係者からは「沖縄が本土から切り捨てられていると言って基地問題では同調を求めてくるのに、尖閣問題では離島を切り捨てるのか」と皮肉る声も上がっている。
尖閣問題をめぐり、石垣市議会は3月議会で、中国に対する6回目の抗議決議を可決している。
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