最高裁が認定を義務付ける判決を下して以降、県の対応は大きく変わってきた。だが、関心を高める世論がなければ、ふたたび風化してしまう。機運を変えるのは司法や行政ではなく、それを見つめる世論だ。

くまにちコム 2013年05月02日 を転載

知事が控訴取り下げを表明 水俣病認定訴訟

大阪府豊中市の女性(水俣市出身、3月死亡)の遺族が県に女性を水俣病と認定するよう求めた訴訟で、蒲島郁夫知事は2日、女性の認定を義務付けた一審の大阪地裁判決を不服とした県の控訴を取り下げると表明した。4月16日の最高裁判決が、県逆転勝訴とした二審の大阪高裁判決を破棄、差し戻していた。県は手続きが終わり一審判決が確定し次第、女性を認定する。

2日午後、会見した知事は、女性と遺族に対し「長年大変なご心労をかけ申し訳ない。心からおわびする」と謝罪。「知事、政治家、一人の人間として熟慮を重ね、高度な政治的判断の結果だ」と強調した。

控訴取り下げの理由として、(1)最高裁まで争い、認定にあたって総合的、多角的に検討し個別具体的に判断すべきなどの理由で破棄差し戻しになったことを「厳粛に受け止めた」(2)申請から34年7カ月にわたり認定を求めてきた女性と遺族に「これ以上ご心労をかけ続けることは忍び難い」-の2点を挙げた。

複数の症状の組み合わせがない場合も「総合的検討」で認定する余地があるとした最高裁判決後、認定か否かの最初の判断となるため、注目されていた。ただ、知事は「違うレベルの判断。環境相が指示した総合的検討の具体化と関連付けていない」などと述べ、今回の決断はほかの事例には影響しないとの考えを示した。

女性は2004年10月に最高裁で損害賠償請求が確定した関西訴訟の勝訴原告。07年5月、認定義務付けなどを求め、県を訴えた。大阪地裁は10年7月、女性側の訴えを認めたが、県が控訴。大阪高裁は12年4月、県の逆転勝訴を言い渡した。(亀井宏二)

 


リンク
くまにちコム
水俣病百科