国内の経済対策を論ずる上で、世界の経済戦争を見逃すことはできません。円高に苦しむ日本とは対照的に、通貨危機に怯える国々は昔の金本位制に向かっている。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年1月17日 通巻第3860号 を転載

ついにドイツは米仏に金塊の返還を要求した
世界は金本位制復帰に向かっているようである

ドイツ中央銀行(バンデスバンク)は1月17日、フランスと米国に対して正式に金塊の返還を要求した。金備蓄の50%を2020年までにドイツは国内備蓄に切り替えると言明してきた。
そのうえでドイツは水面下で仏米両国に預託金塊の返送を要求してきたのだ。

なぜ水面下の交渉かと言えば、かつてイランとリビアが同じ要求を米国に行い、米国は逆に両国の在米資産凍結措置をとって、結局、バランスオフをはかり金塊は返さなかった。日本は、問題の意味さえわからず、NY連銀に保管してもらっている700トン余の金塊の返還を求めた形跡さえない。

もし、ドイツの要求通りの金塊返還が実現すれば、史上空前の出来事となる。
第一にニューヨーク連銀が保管するドイツの金塊は1500トン、このうち300トンを2020年までにドイツへ返送するとしている。
米国では昨年の大統領選挙の最中に、ロン・ポール下院議員が共和党保守派の意見を代弁して、米国の金本位制復帰を主唱した。とのとき、ついにで発言した注目部分は「米国の保管する金塊ははたして本物か、タングステンにメッキしたモノではないのか、見せろ。外国のものは外国へ返せ」としたポイントにある。
ドイツは、このロン・ポール議員の発言に便乗してきたのだ。

フランスが預かるドイツの金塊は374トン、ちかくドイツへ返還するとフランス中央銀行は発言している。英国が預かっていたドイツの金塊は940トンだが、すでに2001年にドイツへ移送を完了している。

 
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