半世紀に及ぶ水俣問題ゆえに解決に時間を要するということなのか。そもそも問題を隠蔽し放置したことが大きな原因であり、認定基準を争う以前の問題だ。国と県、チッソが当時の非を認めたのは近年のことであり、50年前から隠蔽されてきた情報をもとにした現在の認定基準が適切だとは考えにくい。これを巡って双方が争えば更なる長期化は避けられない。母の無念を背負い訴訟をしている原告の溝口さんはすでに80歳という高齢である。一日も早い解決を望むが、もはや法や科学をもって双方の隔たりを埋めていくのは不可能に近い。人道的見地に基づく政治判断が介入していいのではないか。

くまにちコム 2012年03月07日 を転載

県、水俣病溝口訴訟上告へ知事「認定の根幹」

水俣病の認定審査に必要な病院調査が放置され、棄却処分となった故溝口チエさんに対する熊本県の処分をめぐり、次男の溝口秋生さん(80)=水俣市=が処分取り消しなどを求めた訴訟で、蒲島郁夫知事は7日、処分を取り消して認定を義務付けた福岡高裁判決を不服として最高裁に上告すると発表した。8日にも手続きに入る。

知事は臨時会見で「水俣病認定制度の根幹にかかわる問題が含まれている。高裁判決を受け入れることは行政の長としては難しい」と上告理由を説明。「(判決を受け入れると)過去のことも踏まえ、多くの方の生き方に影響する」と述べ、判決が確定した場合、チエさん以外のかつて認定申請を棄却された人たちにも波及する可能性への懸念も示した。

一方で、5日に原告の秋生さんと会談したことにも触れ、「行政の長と個人としての考えに大変悩んだ」と苦悩をにじませた。

2月27日に言い渡された福岡高裁判決は「認定基準を唯一の基準とするには十分ではなく、運用も適切とは言い難い。チエさんはメチル水銀の摂取歴や生活環境などを検討すれば水俣病と認定できる」と判断した。

県環境生活部は「判決は認定基準が示す医学的知見以外の社会的事実なども含めてチエさんを判断している。認定制度を定めた法の解釈が違う」と反論。「認定は統一的な基準で公平・公正に行うもの」と主張した。

県は、憲法違反や憲法解釈の誤りはないため上告提起ではなく、法令解釈の誤りについて審理を求める上告受理申し立て書を8日にも提出。その後、詳細な理由書を出す。(亀井宏二)

 

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