「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23(2011)年11月3日通巻第3471号 を転載
ギリシアは「自らの命運を自らできめる」と宣言、他国の介入を矜恃が許さない
パパンドロウ首相の決断は賞賛されてしかるべきではないか
どうも日本の新聞論調は可笑しい。
民族、国家の威厳と矜恃に関してはなにも考えていないかのように、ギリシアを二流国家として論じている。欧米の受け売りか、さもなくば国家観なき現代日本の世相を繁栄しているのか?
たしかに現在のギリシアは民族的に、かのソクラテス、プラトンの時代の民族とは異なり、町をあるくとスラブ系、セム系、ラテン系が入り交じっている。
マケドニアの独立に際して、アレキサンダー大王の由緒と矜恃から、「旧ユーとスラビア・マケドニア」という国家の名称を名乗れと譲歩させた。
キプロス問題ではトルコとの非友好的態度を崩さない。
人々はどうか。ラテンの典型のように享楽的であり、かなり無責任。逆に言えば愉しい(ト言うと失礼かも)。
それでもIMF管理は受け入れられない、EUの規制はうるさい蠅のようだ、と言ってEUに残留するかどうかは国民投票にかけると宣言した。国民投票は急遽、十二月五日に行われ、場合によってはユーロからの脱退が考えられる。
このパパンドロウ首相の決断は賞賛されてしかるべきではないのか?
アテネの街を歩くと、偽警官がうようよいる。観光客に警官を偽って荷物検査、カネを抜き取る手口。多くの日本人が引っかかった。
タクシーは「一万ドラクマ」をだして釣り銭を貰おうとすると、芸術的手品のように、「お客さん、これ一千ドラクマです」と言って(用意してある通貨を差し戻す)。
もう一度、稼ぐ手口。ま、トルコだってタクシーは前の客のメーターをとぼけて倒さないで次の客を乗せて走行するから似たようなものか。
それでも民族の栄誉と誇りと主権国家の名誉にかけてEUの言っていることは内政干渉、ならば「ユーロ」から脱退することも辞さないという国民投票は、主権国家として当然の権利行使であり、動揺している独仏や世界の市場には激震が走った。
日本は為替市場への単独介入をたとえ欧米から強く批判されてもひるまず、米国の強制的措置であるTPP参加なんぞ、断固拒否するだけの度胸があるのか、ないのか。
国家民族の誇りを失った政治家に、とてもギリシアの真似も望めないだろう。
久しぶりにソクラテス、プラトン、アリストテレスらの「末裔」が世界を揺らせた。
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