忘れてはならない水俣病の諸問題。
時代を超え、形を変えながらも風評被害の根は深い。現代の子供たちが水俣に対して差別的な言葉を平気で言う背景には、その親たちの知識不足や倫理観の低下が反映している。正しい教育をするのが大人たちの責任だ。
水俣病、正しく理解して 胎児性患者ら交流授業
水俣病の胎児性患者らが県内各地の小中学校で、被害や教訓について児童や生徒に伝える交流授業が8日、南阿蘇村の中松小を皮切りに始まった。患者たちは「つらさを乗り越え、前向きに頑張っている」と語り掛けた。
学校訪問事業は昨年6月、水俣市の中学生がサッカーの練習試合中に市外の中学生から「水俣病、触るな」と差別的発言をされたことがきっかけ。水俣病への理解を深めてもらおうと県が初めて企画し、水俣市の小規模多機能事業所「ほっとはうす」(加藤タケ子施設長)に委託した。
中松小では、同事業所の永本賢二さん(51)と松永幸一郎さん(47)が4、5年生32人に講話した。
永本さんは「鉛筆を買うにも周囲から『補償金で買えていいね』と言われるのが一番嫌だった」と、心無い言葉に傷ついた経験を披露。松永さんは「足の痛みがひどくなり2年前から車いす。ショックだったが、今は車いすも格好いいと前向きな気持ちで頑張っている」と心境を語った。
2人は水俣病資料館での「語り部」や小学校で将棋を教えていることなど、地元での活動も紹介。児童たちは熱心に耳を傾け、5年本田武斗君は「水俣病のことは勉強して少し知っていたけど、もっと分かるようになった」と話した。
本年度内に22校を訪問する。「ほっとはうす」はこれまでも独自に水俣病を伝える活動を続けており、昨年度は110回の交流プログラムを実施した。(辻尚宏)