西村眞悟の時事通信 を転載

誰が二次災害を拡大させているのか

今、統一地方選挙の最中。先ほど車を運転し信号で停止していると、後ろに共産党の候補者の街宣車が止まり、盛んにテープで演説を流し続けていた。そのなかに、福島原発事故に関して、共産党の追及で菅総理が、国内の原発の点検と原子力発電の見直しを約束したというような演説を流していた。
これも二次災害拡大の一つの例かと思って聞いていた。

菅内閣は、「福島産のほうれん草は、食べても害はない」と言いながら、「出荷するな」さらに「摂食するな」と官房長官が言う。また、先日原子炉から海に放射能が検出される水を放水することになったとき、安全だと言いながら、放水を「苦渋の選択」と海江田大臣が言う。これらの発言のために、何が起こっているのか。

それは二次災害の拡大である。
そもそも食べても害がないなら、菅内閣の閣僚は、総理以下、福島の野菜を食べて、日本全国の国民が東北地方で採れた農作物を食べることが復興支援につながると国民に呼びかけることだ。それを何故、菅内閣は「出荷制限」、「摂取制限」を言うのか。放水した水の放射能が害がないなら、何故「苦渋の選択」というのか。その御陰で、韓国からは事前に通達しないのは遺憾だと抗議され、東北沖で採れた魚介類は魚市場が引き取らなくなった。そして、東北被災地の農業漁業は壊滅的打撃をうける。

このようにして菅内閣は国富を消尽している。
また、この様子を眺めて、日本からの物資を放射能付着と難癖をつけて送り返している中国は、我が国の食糧市場を、正真正銘の公害で汚染された中国産野菜で埋め尽くそうと狙っている。

また、原発のことであるが、福島原発は、M9・0の巨大地震でも、地震発生から1秒以内に安全装置が作動して原子炉内の燃焼を止めている。これは見事な技術であり賞賛に値する。従って、福島はチェルノブイリにはならない。
何故、菅氏らはこのことを正々堂々と世界に発表しないのか。

問題は、燃焼停止後の炉の冷却に手こずっていることである。これは、菅総理の指示過剰、地震翌日の早朝菅総理が原発を視察したり、冷却にデモ隊規制用のデモ放水車を使えと指示したり・・・要するに「人災」の可能性がある。

今手元に、スイス政府が編纂して全スイス国民に配布している「民間防衛」という本がある。
その中には「我々は核攻撃からも守られている」という項目があり、核爆発の威力を教えるとともに、上空600メートルで20キロトンの核爆弾が爆発しても避難所におれば90%の人は安全で助かると説明している。そして、放射能について説明し、核爆発の爆心地においても放射能は時間が経つとともに急速に減少し、数日後にはほとんど危険性がなくなる、と書いてある。
その上で、爆発後の放射能の量を測定し、その量に応じて、何日後に避難所から安心して外に出て生活することが出来ると書いて国民を安心させている(例えば核爆発後1時間経って50レントゲンの時は、3日半後に避難所の外に一日中出ていても安全、というように)。

これがスイス政府が全国民に配布した「民間防衛」の内容である。しかもこの前提は、核爆弾の爆発に関することである。つまり、ウラニュームならば95%以上に濃縮したウラニュームの核爆発に関する記述である。それでも爆心地を数日後には安心して歩けると書いてあるのだ。
そこで我が国の原発であるが、ソビエトのように核爆発できる濃度のウランを使っているのではない。その濃縮度は、4~5%に過ぎず、福島原発の炉のなかで核爆発が起こっていたのではないのだ。
そうとするならば、半径30キロ以内は現在に至るも退避せよという政府の言っていることは、核爆発を前提にしても、大げさすぎておかしいのではないか。
昨日から警視庁の機動隊が、30キロ内に入って遺体捜索にあたっているが、彼らが危険な放射能を浴びたというニュースには接していない。

要するに、スイスのように、政府が国民に核爆発や放射能の知識と身の守り方を周知徹底していない我が国においては、説明する菅総理や官房長官も知識がないまま毎日説明し、聞く方の国民も知識がないまま毎日説明を聞いている。
そのうちに、目に見えないものだからあらゆるものが敬遠され、遂に福島ナンバーのトラックで物資を運んでくれるな、ということになる。要するに、こういうときは、政府が責任を持って安全と言い切ることが必要である。それを、内閣の閣僚自体風評に怯え、安全と言い切って何かあったら非難されるので、ここは無難に「出荷しないで」とか「食べないで」とか言っておこうとなっている。
即ち、この国難にふさわしくない責任感のない総理以下の閣僚の責任逃れが、風評という現在の二次災害を拡大させているのだ。それによる被災地の農業漁業そして工業の受ける被害即ち国富の消尽は計り知れない。

そこで最後に言う。
本日、共産党の街宣車が、菅総理が原子力発電を見直すと言っていたと鬼の首を取ったように言っていたが、我が国の総理大臣が今、国民と世界に対して言うべきことは、次の通りである。

「我が国の原子力発電は、その発電量を確保するために巨大な化石燃料を燃やし続けることよりも遙かに安全である。そして、此のM9・0という世界の原発が初めて経験した巨大地震での教訓を生かして、さらに完璧な原発を我が国は造ることができるであろう。」

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