田母神俊雄公式ブログ「志は高く、熱く燃える」2011-02-21を転載
軍事力強化こそが、我が国復活への第一歩
世界を動かしているのは、今なお軍事力である。
この認識がないと、国際政治が見えないし、あらゆる外交交渉が成功することはない。国を守るために、そして外交交渉を成功に導くためには軍事力が強いことが必須の条件である。少なくとも周辺諸国との軍事バランスが必要なのである。我が国は、中国などとの軍事力の均衡を図り、いざとなれば軍事力を使っても国を守る、国民を守るという覚悟が必要である。その覚悟がない国の言うことは国際社会では無視されるだけである。
前原外務大臣が先日モスクワを訪問し、北方領土は我が国の領土であるという主張をしたようであるが、これによって何かが動くかというと全く動くことはないであろう。そんなものは無視しておけというのがロシアの態度である。我が国が、倫理や道徳、人権、民主主義などを説けば世界は動くかと言えば全く動かない。軍事力の裏付けがない発言が世界を動かすことは出来ない。
菅総理もまた、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問を「許せない暴挙」と言ったが、これによって何かが動くこともない。通常、世界の首脳が許せない暴挙と言えば、軍事力を使うぞということを暗示している場合が多い。しかし我が国にはその能力はないし、勿論、菅総理にその覚悟があるわけではない。昨年の尖閣諸島における中国漁船の体当たり事件で弱腰だと批判されたので、強がって見せただけのジェスチャーである。彼は恐らく心の中では怒りを感じてさえいないように私には思える。
我が国は、今こそ軍事力を強化しなければならない。中国やロシアに対して、軍事バランスを取ってから発言をしなければ、彼らは日本の言い分を聞いてくれることはないであろう。当然、核武装も考えていかなければならない。核武装しなければ、外交交渉で核武装国を動かすことは出来ない。こう言うと我が国では、軍事大国を目指すのか、軍事大国になったらまた戦争になる、核武装なんかとんでもないと言う人たちがいる。しかし、我が国が軍事大国になることと戦争になることは直結しない。私は軍事大国になった方が戦争の可能性は遠のくと思っている。プロレスラーのような強い人にけんかを吹っかける人間はいないのだ。
もうこれからは、大きな国同志が戦争をする可能性は極めて低い。軍事力は、第二次大戦までの戦争をやるための軍事力ではなくて、相手国を外交交渉のテーブルに着かせるためにこそ必要なのだ。この軍事力に対する認識が我が国の政治家には極めて薄いように思えるのだ。
我が国の軍事力は経済力に応じた規模になっていない。経済力に応じた軍事力を持たなければ、国を守ることは出来ないし、国際社会の安定にも貢献できない。我が国ではよく大臣などが「軍事大国にはならない」などと言うことがあるが、経済大国は軍事大国にならざるを得ないのだ。経済大国が軍事大国にならないということは、世界の安定に貢献しないと宣言しているようなものであり、極めて無責任な一国平和主義の思想なのだ。軍事大国にならないと言って世界を安心させて、世界の尊敬を受けたいと思っているのかもしれないが、馬鹿にされているだけである。
我が国は軍事力を強化して、更に核武装もして、世界の一流国になることを何故目指さないのだろう。そうならなければ領土問題など解決できないのだ。今の我が国には、十数年のデフレ継続によってどうにもならないという負け犬根性が染み付いている。何をやってもだめだと言う諦めである。しかし、諦めることはない。我が国にはまだまだ底力がある。我が国がアメリカに気を遣い、中国におもねっていることが我が国の国力を弱めているのだ。デフレ下でデフレ対策をやらずに、改革という名のインフレ対策をやっている。これは米中などからは大歓迎だ。外交とは、自分の国の国力強化のために、相手国の国力を弱体化させることである。軍事力を直接使わないけれども、ISOやTPPなど各種の国際的な仕組みを作り、ウソ、デマ、捏造の情報を流してでも、自国に富が還流するシステムを作ろうとしているのが国際社会なのである。その腹黒い国際社会で、倫理や道徳を説くだけで生きていけるわけがない。
我が国も、我が国が儲かるシステムをオブラートに包んで提案したらいいのだ。しかし、現状では我が国の提案に乗ってくれる国はほとんどないであろう。軍事力が弱いからである。対等な協議ができないのだ。我が国が、軍事力を強化することこそ我が国復活への第一歩なのである。