【バンコク西尾英之】
ミャンマーの首都ネピドーで31日午前(日本時間同)、ほぼ半世紀ぶりに国会が招集された。2月中旬から下旬には上下院合同の連邦議会が大統領を選出して新政権が発足。ミャンマーは歴史的な「民政移管」を実現するが、大統領には軍高官が選出され、民政移管後も事実上の軍事支配が継続するのは確実な情勢だ。
ミャンマーで選挙結果に基づき複数の政党が参加する国会が開かれるのは、ネウィン将軍によるクーデターで憲法と国会が廃止された1962年以来。開会する国会は上院(民族院)と下院(人民院)で、昨年11月に20年ぶりに実施された総選挙で当選した議員とともに、両院とも憲法で定めた定数の25%に当たる軍推薦枠議員が出席した。
総選挙では軍事政権翼賛政党が圧勝し、軍推薦枠を含めれば両院とも8割以上を軍に近い議員が占める。国会初日の31日は両院が議長を選出するが、軍部の意向に沿った議員が選ばれるのは確実だ。
国会は2月中旬までに上下院合同の連邦議会を開き3人の副大統領を選出。この中から大統領が選ばれる。大統領には軍事政権ナンバー3のシュエマン前軍総参謀長(63)が有力視されてきたが、最近になって、これまで独裁的権限を振るってきた現政権トップのタンシュエ国家平和発展評議会議長(77)が就任に意欲を示しているとの見方が浮上している。
◇情報統制、取材を認めず
ミャンマーの首都ネピドーで、新たに建設された国会議事堂周辺は厳戒体制が敷かれている。
軍事政権は05年、最大都市ヤンゴンから約300キロ北のネピドーへ首都を移転し、原野に議事堂や政府施設を建設した。30日、ネピドー入りした毎日新聞の通信員によると、議事堂に通じる道路はすべて当局によって閉鎖され、離れた場所からの議事堂の写真撮影も制止された。
反軍政系誌「イラワディ」(電子版)によると、野党議員は当局から詳しい議事日程についても知らされていないという。民主化勢力「国民民主勢力」(NDF)は「国会で政治犯釈放や経済自由化を求める」としているが、政権は国営メディア以外の記者の議事堂内での取材を認めず、議員にも録音機や携帯電話の持ち込みを禁じるなど、厳しい情報統制を敷いた。