米軍の救難ヘリ墜落で沖縄県内外で大きく報じられ、抗議が殺到している。理解はするが、基地内の訓練中の事故に対してヒステリックすぎる感がある。訓練は基地内外で行われており、万一居住区に墜落していたら問題の大きさは計り知れない。だが、何のためにその訓練が行われていたかを報じるメディアはない。

西村真悟さんがいわれるように、この救難ヘリは、二年前の東日本大震災の被災現場に急行し確実に救難活動を実施している。この活動が緊急時に可能なのは平素に日々訓練に励んでいるからである。
「抗議する前に、不幸にして異境で殉職したアメリカ軍兵士への追悼とその家族とその部隊の仲間に対するお悔やみ、そして負傷者の速やかな回復を祈ると、何故、日本政府は、特に防衛大臣は、一言、言わないのか。」
まさにその通りである。

眞悟の時事通信(平成25年8月8日号) を転載

国益への感受性を磨け

国滅びるときの状況は、国家民族共同体の存立の要件に関する感受性の鈍化であろう。その感受性は、我が国を取り巻く内外の情勢を本能的に感じることから研ぎ澄まされる。

しかしながら、現在の状況を眺めるとき、マスコミの論調も政治家の意識も、我が国存立に関する感受性が欠落していると思われる事例が連続しているように思える。つまり、国が滅びる方向に傾斜していると憂う。
その事例を二つ挙げてみる。

(1)まず、原発再稼働について
この先、原発が再稼働しなければ、我が国の電気料金は相次いで値上げされていき、家計や企業経営への重大な打撃となることは必至である。
そこで原子力規制委員会は、六月十九日に福島第一原子力発電所事故を教訓にした新たな規制基準を決定し、それは七月八日に施行された。そしてさっそく、全国の電力各社は新基準に基づく原発の再稼働の許可を申請した。

この再稼働申請の際のテレビの画面は、平身低頭して申請書を提出する電力各社の幹部の姿と、それを無愛想に礼もせずに受け取る規制委員会の姿を映していた。それを見て、規制委員会とは「何様か」と思ったものだ。彼らはまるで尊大に電力各社に対処することが「正義」を体現している姿とでも錯覚しているのであろうか。

原子力規制委員会には、新基準を作った以上、速やかに再稼働申請を審査し、適合しておれば一日でも速く再稼働を認めるべき任務がある。何故なら、再稼働が遅れ電気料金の値上げの連鎖が起こると、家計と企業の力が衰えて、我が国家衰退への傾斜が進むからである。これこそ、日本弱体化を願い、尖閣を奪おうとする中共の一番喜ぶことである。

しかるに、あれほど尊大に再稼働申請書を受け取っていた規制委員会が、国民生活に直結する原発の再稼働に関して、何時になったら審査を終えるのか、まったく伝わってこない。彼らは、自らの仕事が国家と国民の明暗を分けかねないということが分かっているのか、さらに、仕事をしているのかしていないのか、さっぱり分からない。

マスコミも、放射能については安全な線量でも危険なようにしつこく報道するが、規制委員会が仕事をしているのか否かについては問題意識がなく報道せず、のんきなものである。

これは、例えば国際マラソンの中継のように、今再稼働審査は何処まで進んでいるのか、障害があるのか、何時結論が出るのか、逐一報道してもよいほどの重大問題である。生活保護費が少し削減されても報道するのならば、全国民と全産業に深刻な影響を与える電気料金値上げに直結するこの問題をもっと報道してしかるべきである。

さらに之に関連して、原子炉の下に活断層があるか否かについてはよく騒ぐが、活断層が有るか否かは、その専門家でも曾て建てられていた工場の基礎杭を活断層と思い込むほど分からないのだ。問題は、活断層が動いたとしても、工学的観点から原発の安全性が確保されているか否かの判定であろう。

日本の技術では、都会の高層マンションも原発も、下の活断層が動いても安全性は保たれる。だから大都市に人は安心して密集して住んでいるのではないか。こういうことに言及せずに、原発の下に活断層があるか否かだけが騒がれる。数センチ動く活断層でも活断層なら原発は全て不可で良いのか。
この一種の思考停止が如何に電気料金値上げ、国力低下、国家衰亡につながるか、鬼の首を取ったように、活断層があるかないかで騒ぐ専門家もマスコミも意識していない。

(2)沖縄のアメリカ海軍HH60救難ヘリの墜落について
この度、沖縄で墜落したHH60救難ヘリの四人の乗組員は訓練飛行中であった。墜落して、一人は死亡し三人は重傷を負って病院に収容されている。日本政府と沖縄県の対応は、HH60の墜落に対してアメリカ軍に「厳重抗議」である。本日(七日)は、外務省高官がアメリカに行って国務省次官に「厳重抗議」したと報道されている。

一体、「厳重抗議」だけでいいのか
このHH60救難ヘリは、二年前の東日本大震災の被災現場に急行し確実に救難活動を実施している。この活動が緊急時に可能なのは平素に日々訓練に励んでいるからである。
さらに彼らのこの訓練は、現実味をおびてきた尖閣に対する中共軍の侵攻に対処するためのものであり、訓練自体が中共軍の侵攻を抑止している。従って、抗議する前に、不幸にして異境で殉職したアメリカ軍兵士への追悼とその家族とその部隊の仲間に対するお悔やみ、そして負傷者の速やかな回復を祈ると、何故、日本政府は、特に防衛大臣は、一言、言わないのか。

中共の中華帝国主義というべき露骨な軍備増強と武力による威嚇に対して、アメリカとの同盟とその沖縄におけるプレゼンスが、現在の我が国にとって如何に重要であるか、防衛省、外務省そして政治家とマスコミは考えたことがあるのか。

時あたかも、中共の脅威に対する日米共同機動展開訓練が始まったばかりなのだ。この訓練は、昨年の民主党政権時代には、民主党の言う「政治的理由」で行われなかった。しかし、本年六月、アメリカ西海岸でアメリカ軍と陸海空の自衛隊の水陸両用共同訓練が実施された。

海上自衛隊の輸送艦に乗り組んだ陸上自衛隊西部方面軍の水陸両用戦専門部隊が強襲揚陸訓練をし、海上自衛隊の護衛艦艦上でアメリカ軍のオスプレイの着発艦訓練が行われ、イージス艦「あたご」による対地上陸支援艦砲射撃も実施されている。

沖縄で訓練に励んでいるアメリカ軍も、これら日米共同訓練に連なる部隊であり、この各訓練が総合されて沖縄そして尖閣が守られているのである。

よって、我が国の総理大臣と防衛大臣は、これら総体としての日米両軍の訓練の意義を踏まえて、この度のHH60救難ヘリの訓練中の不幸な事故に対するコメントを発するべきである。そうでなければ、いざとなったときに、取り返しがつかない。

最後に、八月の六日は、広島に原子爆弾が投下された日であり、九日は長崎である。この日に当たり、我が国に二度と再び原子爆弾が投下されることがないようにするには、何をなすべきか、切実な問題として深思すべきであろう。

何故なら、我が国周辺の中共も北朝鮮も、共に核兵器を保有し、公然と我が国に対する核攻撃のあり得べきことを公言しているからである。この中共と北朝鮮の核を如何に抑止するかに取り組まずして、ひたすら核保有を誇示する相手に対して「核廃絶」だけを訴えるのは無責任ではないか。

 


 
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