ジュネーブの国際会議において水銀規制を定める条約名を「水俣条約」にすることが決まった。
水俣からはじまった水銀被害と今日に至る経緯を踏まえた教訓を発信したいとする意見と、半世紀に及ぶ風評被害がさらに助長されるという意見などが交差し、命名に関しては国内で賛否が絶えなかったが、ジュネーブにおける国際会議は満場一致で可決した。条約内容に関しては各国の事情が異なるため不十分であるという意見が多いが、世界的な取り組みに至ったことは大きな前進だ。10月に地元の熊本・水俣市で条約は採択される。

くまにちコム 2013年01月20日

水俣は評価と不満交錯 水銀規制条約交渉合意

水銀規制条約をめぐる国連の政府間交渉が19日、合意に達し、条約名は「水俣条約」に決まった。これまで条約の名称や内容をめぐって議論が続いてきた地元水俣市では、評価の声と不満の声が交錯した。

水俣条約との命名を求めてきた宮本勝彬水俣市長は「身の引き締まる思い。世界各国に水俣病の経験と教訓をしっかり伝える。環境に関する市の取り組みも情報発信したい」とコメントした。

命名を支持してきた水俣病資料館語り部の会の緒方正実副会長は「被害者の命の重さを受け止めてくれた結果。水俣の悲惨さを世界に伝えることで、水銀に対する規制は十分できる」と条約の実効性に期待した。

一方、命名に反対していた水俣病被害市民の会や水俣病互助会など5団体は「合意内容は不十分」とする声明を発表。「このままでは水俣病の悲劇が繰り返されることが予想される。条約のさらなる充実を働き掛ける」と訴えた。

市民の会の山下善寛事務局長は「水俣と名付けた以上、責任は重い。命名にふさわしい内容にすべきだ」。互助会の上村好男さんも「未認定患者救済や埋め立て地の水銀ヘドロなど問題は残っており、これで問題が解決するわけではない」と強調した。

「風評被害が続く」との理由で昨年末、命名に反対する意見書を可決した水俣市議会。真野頼隆議長は「命名は残念。国や県は、風評被害につながらないような対応を責任を持って進めてほしい」と求めた。

水俣条約は10月、熊本、水俣両市で開かれる国際会議で採択される。蒲島郁夫知事は「水俣病の歴史と再生に向かう現在の水俣の姿を見てもらい、水俣病を二度と起こしてはならないという思いで採択してもらうのは意義深い」とコメント。熊本学園大の丸山定巳教授(環境社会学)は「10月の国際会議は、水俣病が終わっていない現実を直視してもらう好機。決して解決したかのようにごまかしてはならない」とくぎを刺した。(辻尚宏、石貫謹也)

 
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