鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第83号 を転載

総選挙の争点は国防である

今回の選挙の真の争点は、尖閣防衛である。尖閣国有化を決定した野田総理に対して、中国は露骨に反発を示した。もともと野田総理は石原慎太郎の尖閣整備計画が中国を刺激することを恐れて国有化を決定した。国有化して、現状通り無人状態を続ければ、中国もおとなしくなるだろうという期待からである。

ところが中国は「中国領の売買を認めない」と言い、国有化が決まってからは「国有化撤回」を言い出した。国有化を撤回して元の地主に買い戻させても、その売買も認めないだろうから、中国と話し合えば、結局尖閣を中国に譲渡する以外になくなるのである。

一口にいえば野田総理は中国の罠にはまったのである。それに気付いた野田総理が話し合いを拒否すると、民主党内から親中派の細野豪志に総理を譲れという辞任圧力が高まった。ここで野田総理は辞任を拒否して、負けると分かり切っている総選挙の道を選んだのである。細野が総理になれば尖閣は譲渡される、野田はそれを拒否したのである。

党首討論で野田総理は安倍自民党総裁について「歴史観、国家観は傾聴に値する」と言い「一緒にやりましょう」という目は潤んでいた。「もはや尖閣を守れるのは貴方しかいない」と言っているかの様だった。
おそらく安倍総裁もそれを察したのであろう。最後にこう言った。「この外交敗北に終止符を打って、どちらの政党が美しい海と日本の国土、領海、国民を守る事ができるかどうか、それを(国民に)決めていただこうではありませんか」

今回の選挙は戦後初めて、国防が争点となった選挙である。

尖閣危機は収まる気配がない。以下は夕刊フジ、いずれも小生がコメントを寄せている。

  • 「中国ナゾの軍用機開発、脅威の無人機、実戦配備なら尖閣上空侵犯も」
  • 「未熟な中国の新型ステルス機、70年代の技術活用、ハリボテでも効果」
  • 「中国“尖閣挑発”航行、いつまで続く? 狙いは中国海軍の予算獲得か」
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    軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
    1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。

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