「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年8月8日通巻第3718号 を転載

瀋陽の大型商店街が市政府の遣り方に抗議、一斉休業「シャッター通り」に
不思議な対抗策に瀋陽市の当局もどうしてよいか分からない

瀋陽の北駅に近い「五愛市場」などで、店舗の衛生、火災防止設備の点検などを消防署が抜き打ちに行い、不合格を乱発、罰金五千元。無店舗営業の悪質露店などにも罰金五万元から二十万元という高額な罰金を科した。
このため移動理髪店、産地直送野菜、自転車・バイク修繕、簡素食事露店などが軒並み閉店に追い込まれた。

この乱脈な職権乱用ともいうべきやりたかに商店主らが団結し、8月5日から一斉休業、殷賑をほこった商店街がゴーストタウンのようになったとして、華字紙各紙が報道した。浙江省温州の工場地帯が一斉にシャッター通りとなったのは、対欧米輸出がとまって、製造業に冬の時代がきたからだが、日本でも大田区などで見慣れた風景である。

しかし瀋陽は経済発展著しい遼寧省の省都(遼寧省は昨年のGDP成長率が16・4%)、日本が経営した満州時代の奉天であり、人口750万の大都会である。

▼北京の住民決起はやくざと内戦状態

北京市は七月下旬に豪雨に襲われ各地で土砂崩れ、浸水被害などがあったが、死者は79名とした当局の発表数字はおかしい、百名は死んでいると報道した新聞に発禁命令。
さてその北京市西城区菜市口で凄まじい暴動が8月3日に起きた。
発端はビル開発のための立ち退きに不同意の庶民と暴力団との乱闘。庶民は混棒、鉄棒で武装し、ブルドーザやクレーンを駆動して住民がまだ住んでいる住宅を破壊する暴力団(ゼネコンに雇われた黒社会)と対決した。

「什方モデル」と言われる庶民の抗議行動が過激化している。
四川省什方の場合、6月29日に発生した暴動で徳陽市副市長が負傷し、7月1日には抗議デモ隊が市庁舎を襲撃して机やらパソコンなど片っ端から破壊した。目的は金属工場の新設に対しての公害反対だった。

この抗議行動に二つの特徴が見られたため、以後「什方モデル」と言われる。
第一は学生が夥しく参加したことで、これは天安門事件以来と考えられる。
第二に、従来の血の弾圧を避けて武警は催涙ガスを撃つだけに止め、この中継画面を見て、各地の抗議行動に「組織的」「同発的」で、しかも学生が大量に参加するようになったのである。

(什方の「方」には「こざと」がつきます)

 
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