日本人の強さは、逆境に立った時の結束力と回復意欲の高さだ。
「復活の第一歩に」阿蘇の被災ホテルで披露宴
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記録的な豪雨で甚大な被害を受けた阿蘇市内牧温泉街の「阿蘇ホテル一番館」で21日、東京在住のカップルの結婚披露宴があった。同ホテルは一時、休館を余儀なくされたが、従業員らが一丸となった復旧作業で間に合わせた。関係者は「内牧温泉復活の第一歩に」と気持ちを新たにしている。
新郎新婦は東京都内で同じ旅行会社に勤めている尼ケ崎豊さん(31)と絵梨佳さん(27)。
豊さんは九州地区ツアーの企画担当として50回以上阿蘇を訪れ、「観光地はもちろん、食や温泉、人の温かさなど魅力が詰まった阿蘇はまるで宝箱」と魅了された。絵梨佳さんも「添乗で訪れた草千里の広々とした光景が、今まで見た中で一番きれいだった」。共に大好きな阿蘇で披露宴を開くことにした。
しかし、12日の豪雨で内牧地区は床上浸水による被害が相次いだ。同ホテルも大広間やレストランに泥水がたまり、同日から営業を中断。豊さんは「ニュースを見て(内牧での披露宴を)見合わせようかと悩んだ」と打ち明ける。
一方、ホテル側は「被災で心が折れそうになる中、阿蘇を愛する2人の新たな門出となる披露宴を目標にして前に進みたい」と復旧を約束。自宅が被災した従業員らも総出で汚泥を搬出したり、カーペットを張り替える作業に励み、20日、営業再開にこぎつけた。
披露宴では、2人の要望で特注した米塚のウエディングケーキも登場。入刀する2人に出席者や従業員から盛んな拍手が送られた。
「一生忘れられない思い出になった。内牧温泉が一日も早く元気になってほしい」と2人。同ホテルの女将[おかみ]、和田久美子さん(56)は「披露宴の準備で従業員が一つになれた。予約キャンセルなど逆風はあるが、営業再開に努力している旅館仲間と力を合わせ、必ず復興します」と感無量の様子だった。(今村浩)