石平(せきへい)のチャイナウォッチ 2012/05/30 を転載

「中国書記官スパイ疑惑」で留意すべき点

中国大使館書記官のスパイ疑惑の一件で1番怪しい点とはすなわち、
彼は1993年以来計5回にわたって来日しているが、その都度、地方公務員、留学生、研究者、外交官と肩書を次々と変えてきていることである。

日本でもそうであるが、中国の公務員制度の中で、一地方公務員の出身者は外交部に入って駐在国の外交官となるようなケースはほとんどない。普通ならあり得ないことである。

これにたいする唯一の合理的解釈とはすなわち、いわば地方公務員も研究院も外交官も、それらの肩書きはすべてこの人物の仮のものであって、彼の正体はやはり情報工作員である以外にない、ということである。

情報工作員だからこそ、その都度の仕事上の必要に応じて、地方公務員から外交官へと自由自在に身分と肩書きを変えていくことが出来たわけである。

もしこの推定は正しければ、そこからはわれわれが多いに警戒すべき一つの深刻な状況が生じてきているはずである。

つまり、もしこの正真正銘の情報工作員が、その都度の必要に応じて身分を変えて来日しているのであれば、逆にいえばすなわち、公務員や研究員や学者や留学生、あるいは企業家や商売人などの「普通の身分」で来日している中国人の中に、この人物と同様の情報工作員が必ずや混ぜっている、ということである。

正真正銘の情報工作員は、あまり目立たないそれらの「普通の身分」の人々に扮して、日本の政治経済軍事などにかんする情報の収集と、日本の政・官・財界・マスコミにたいする懐柔工作やロビー活動などを行っているというのは、まさに中国の対日情報工作の実態であろう。

つまり、日本の政界や財界や官僚やマスコミに接近してきている中国人の研究者や学者、あるいは経営者や商売人の中には、もちろん数の少ない一部であろうが、軍の情報部員も含めた中国の情報工作員は必ず入っているのだ、ということである。

それに対して、日本の公安当局だけではなく、政治家も官僚も財界人もマスコミも、もうちょっと気をつけた方が良いのではないか。

( 石 平 )

 
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