世界が認める「ipad」は中国内で未登録商標なので、先に登録した中国企業がipadの販売権を有することになったようだ。これによってアップル社は中国での販売ができなくなる。法ではない人治国家らしい出来事だ。白昼堂々の居直り強盗がまかり通る世界だ。

アップル社は数年前から工場を中国に建設し、そこで製造されたものを中国および世界中に販売してきた。労働条件の劣悪さが指摘されることはあったが、共産党政府はそうした「人権」問題は放置している。それとは性質の異なる「商標権」は多額のお金と米国世論が動くので、そちらを選んだ。

では、なぜ今頃になってこうした騒動になったか?
こういう時は中南海をみてみよう。今年は共産党の指導者が交代することになっている。上海派の江沢民グループの支持を受けている太子党の習近平が次期主席に最有力である。胡錦濤退任後にも自分たちを守るためには党内に影響力を残しておかなければいけない団派たち。共産党内はこの二極の熾烈な闘争の真っ最中だ。

習近平と同じ太子党に属する重慶市長・薄熙来(はく きらい)は、腹心である王立軍副市長が四川省成都にある米国大使館に飛び込んだのを機に数十台の装甲車を向かわせて米国大使館を包囲する。それも共産党中央の静止を振り切ってのことだ。地元四川省当局はそれをさらに包囲して、戦闘寸前になった。米国大使館から出てきた王立軍の身柄は四川省側(胡錦涛一派)が引き取り、重慶からきた一軍は引き上げた。共産党始まって以来の大事件といわれたこの一件によって薄熙来は再起不能とまで言われている。一説には太子党の内ゲバともいわれるが、結果として団派が大きな獲物をつかんだ。

この時米国はなぜ王立軍の亡命を断ったのかということについて、ある中国研究者は、米国は次期主席候補の中では反米意識の薄い習近平が就任したほうが外交がしやすいと読んでいる。だから訪米を控えた習近平に恩を売る目的だろうという。そもそも共産党はギャング組織だから、その中の権力闘争に負けたものを米国が助ける必要もない。

習近平は米国訪問中、行く先々で人権問題だの経済摩擦だのといろいろ注文を付けられたというが、これには前記の王立軍の件が影響していると考えれば、自然な成り行きだろう。多少辛くとも耐えねばならない立場だった。だが、米国も迎えた以上は手ぶらでは返せないから、何らかの手土産をもたせただろう。

そして起きた「アップル商標騒動」
米国系企業の中でも知名度の高いアップルを標的にした商標権騒動は、民間レベルを超えて米中関係に発展するのは明らかだ。中国の理不尽さに米国民は怒りをあらわすだろう。習近平の米国外交に水を差した事件となった。

これら一連の出来事は、権力闘争の中で団派が糸を引く事件と考えれば理解しやすい。初めからアップルに罪はなく、共産党の権力闘争に利用されただけなのだ。今後もこうした不可解な事件が続くと思われるが、場合によっては内戦、そして共産党崩壊となる可能性がある。隣国に住む私たちは常にそれを想定しておかなければならない。

産経ニュース 2012.2.21
中国のアップル商標権騒動、米中知財摩擦へ波紋広げる