「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24年2月15日(水曜日)通巻第3559号 を転載

「スーパー・マリオ」か、「冷血動物」か
イタリアの新首相マリオ・モンティが経済危機を乗り越える自信を秘めて

日本にも、このタイプの政治家が必要ではないか。
女たらし、億万長者だけどロリコン趣味。悪趣味の代名詞のようにいわれたベルルスコーニ前首相に代わってイタリア経済の舵取りに忽然と乗り出したのはマリオ・モンティ新首相だ。

マリオ・モンティ首相はイタリア特有の議会制度の申し子である。すなわち選挙で選ばれたことのない超エリートの「終身上院議員」(ローマ帝国の上院の名残りか、大統領が任命する。五人しかいない)。

いよいよ断末魔の悲鳴が聞こえるや、「サロンのエリート」として庶民の苦労なゾ分かるまいとされたマリオ・モンティに暫定首相ポストが回ってきた。学者肌のかれに果たして首相が務まるか、世間は疑問符をつけた。
彼はミラノの大学の学長、父親は銀行家。本人はながらくEUの高級幹部をつとめ、EU統合という理想に邁進努力した。

ベルルスコーニ前首相の辞任をうけて昨11月に組閣に着手するや、驚き桃の木、全閣僚を議員から選ばず、民間からひっこぬくという荒技。つぎに予算から贅肉をそぎ落とし、ばっさばっさと無駄な予算を斬りまくった。左翼、労組を真っ正面から敵に回したのだ。
おもに公共福祉、医療、薬品の節約。公務員の冗費と社会保障、医療保険の無駄が目に余っていた。この点ではギリシアと似ている。マリオはその聖域に手を突っ込んだ。
この仕儀は大阪の橋下の手法にも似ている。

ついで若者の失業解消にマリオが採用したのは軍隊の定員を増やし、若者の入隊を促したことだ。日本の政治家よ、これらはすべてモンティのイタリアが参考になるのではありませんか?

▼スーパー・マリオが動いた

EU首脳陣は、イタリア国債の利率が7%の危機水域から就任後僅か三ヶ月で5・6%に下がったので、これはイタリアの経済が回復する奇跡の主役ではないかと期待をよせ、かれに「スーパー・マリオ」の渾名を冠した。

他方、マリオ首相の措置で規制緩和に踏み切られた業界、たとえば薬局やらタクシー組合は、マリオは「冷血動物」として酷評し、ストライキに突入した。これもギリシアや、スペイン、ポルトガルの経過に酷似する。

ギリシアは特権にあぐらをかいてきた公務員や左翼、労組がついに暴力沙汰におよび、2012年2月13日のデモは荒れ放題、銀行、商店など200店舗がアテネで焼き討ちにあった。民衆のパパデモス政権への抗議?どうも違いますね。左翼の扇動、治安悪化と南欧諸国への飛び火が狙いだろう。

だがイタリア国民の大半は楽天的であり、生活をエンジョイすることにかけては世界一流。今回の苦境から抜け出すには、すこしの我慢は致し方なしとマリオ路線に賛意を表明している。
野党もストライキを打つものの、半ば投げやりとなって、イタリアは対GDP赤字国債120%を2013年目標に多少は減らせそうである。

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