「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)4月27日(水曜日)通巻第3319号を転載
「上海派」「団派」「太子党」を猛追する「資源派」は第六世代が中軸
シノペック、中国石化、中国海洋石油のボスらが中央委員会へ
中国で稼働中の原発は13基。建設中が26基。そして計画中が28基。
福島原発事故のあとを受けても中国は強気で「中国の技術は水準が高く、事故は心配がない」と豪語した。
このエネルギー戦略の立案と行使を推進するのが、既存の利権集団をこえて台頭凄まじき「資源派」。第六世代の中核部隊である。原発はかれらの利権の生命線でもある。
「上海派」(江沢民らが主導する新産業により裨益組)「団派」(胡錦濤、李克強らの共産主義青年団)「太子党」(習近平など革命元勲の子ら)を超党派的に人脈が重複するが、権力中枢で顕著に台頭した「資源派」とは、誰々が担っているのか。
シノペックの会長ポストにあるのは蘇樹林。彼は福建省の省長代理を兼ねる。蘇が、「資源派」の元締めと見られる。
蒋潔敏はCNPC(中国石化)会長兼同社党書記として君臨し、雲南省長兼任の辞令が発令されそう(ジェイムズタウン財団発行『チャイナブリーフ』、4月22日号)。
チェルノムイルジン元首相がロシア最大資源企業「ガスプロム」前会長、この会社の前社長はメドベージェフ現大統領。この実業家と政治家がヤヌスの首のように入れ替わるのがロシアと中国では共通するようである。
蘇樹林と蒋潔敏のふたりは中国共産党中央委員会の中央委員候補である。蘇は遼寧省党委員会中央委員を経て、「第六世代」の指導者のリストに加わっている。蒋は青海省副省長を歴任した。
このように地方幹部の経験をもって石油化学の国有企業トップを兼ねる第六世代のなかには衛留成(海南省党書記、中央委員)らがいる。
衛留成はCNOOC(中国海洋石油)の会長だった。
▼国際マネジメントに理解が薄い守旧派はなかなか資源ビジネスには近づけない
第六世代のホープのひとり、張高麗(天津市書記)や現職政治局員の周永康らも、石油とガス産業からの出身者である。
そして彼らは誰もが原発推進派である。
これまで石油、ガス、水力発電などは守旧派の息子達の利権であり、たとえば水利、とりわけ水力発電プロジェクトは李鵬元首相の息子ふたりが介入し、太子党がこうした国有企業幹部を兼ねるのは常識でもあった。
変化が現れたのはシノペックもCNPCもCNOOCも、いまや国際企業であり、さらには香港に上場しており、海外からの投資家の目も厳しいため、マネジメントが欧米風に改められつつあることだ。
とりわけ近代的マネジメントのセンスのある第六世代が、守旧派をおさえて企業トップにたてる背景である。
一時は李克強ともライバル関係にあって権力ランキングで並んだ李源潮(前江蘇省書記、組織部長)なども、石油&ガスのビジネス業界で健在だそうである。
とはいえ、石油ガスなどエネルギー産業はあまりに迅速な成長をとげたため、利益も大きく、うなるような収入を前にすれば、汚職も蔓延り、奢侈・贅沢に溺れる者もでる。
一月のサザビース香港オークションで仏葡萄酒ラフィット・ロートシルトを一本1890万円x3本も落札したのはシノペックだった。
シノペック元会長の陳東海(音訳)は09年に2800万ドルの賄賂を暴かれ死刑判決(執行猶予付き)を受けた。中国国家核力企業の康日新も100万ドルの賄賂が発覚して、無期懲役の判決がでた。
鉄道大臣が新幹線工事にからんでの賄賂容疑で勾留され、新部長が就任したとたん、新幹線のスピードを50キロ減速するとした。安全管理が焦眉の急、台頭した、『資源派』にとって口には出さぬが最大の関心事は福島原発である。