宮崎正弘の国際ニュース・早読み
平成22年(2010)10月25日(月曜日)通巻3112号 を転載
ガイトナー米財務長官と王岐山副首相とは何を話し合ったのか
G20の帰路、突如ガイトナーは中国へ向かって密談
G20会議を終えてガイトナー米財務長官は韓国からの帰路、とつじょ南下して山東省青島の飛行場へ飛んだ。10月14日の日曜日。日本の大臣と日銀総裁はまっすぐ帰った。
青島空港でガイトナーを待ち受けていたのは王岐山(副首相)だった。
各紙がこの「米中密談」の憶測を流しているが、台北タイムズは「人民元の切り上げ問題が深刻」と分析した(10月15日付け)。
11月2日の米国中間選挙は真ん前。オバマ与党惨敗は確定的だが、「人民元をすこしでも劇的に切り上げて呉れたら、オバマ政権に貸しができるじゃないか」とでも?
注目すべきは、王岐山である。
次期首相最有力の李克強はどうしたの?すでに消息筋では李克強の首相就任は難しく、リリーフに王岐山説が浮上していることは小誌でも紹介したが、この男、いったい何者か。
王岐山も太子党、桃依林元副首相の女婿。しかし経済に明るく、過去数年とくにガイトナーとなってからは、毎回訪中のつど、中国の財務大臣、中央銀行総裁をさしおいて、出てくるのは王副首相である。
ヒラリー訪中のときも、外相をさしおいて、王岐山がでてくる。
かれは政治局員だから、現在のヒエラルキーでトップ25のなかに入る。
もっぱら金融畑を歩き、人民銀行副行長、中国建設銀行行長から広東省副省長、海南省党書記を歴任。
王は「消防士」の渾名をもつほど危機管理能力があり、2003年のSARS騒ぎのおり、北京市長辞任を受けて、世界的パンでミックの処理をこなし、北京市長のリリーフ。
このとき、政治家としておおいに認められる。それまでは金融専門家、エコノミストとしてしか評価されていなかった。北京五輪準備の土壇場でも、責任者として対応、上海万博の準備がおくれたときもリリーフとして陣頭指揮した。
つまり中国金融政策のエースである。
だからガイトナーは青島までとんで、密談を重ねた。