日印EPA:自動車・鉄鋼など歓迎ジェネリック譲歩、製薬業界は警戒
インドのシン首相が来日し25日、日本とインドの経済連携協定(EPA)締結で合意し来年にも発効する見通しとなったことを日本の経済界は歓迎している。高成長を見込めるインドとの間で貿易や投資が活発になることは、国内市場が縮小する日本企業にとってプラスになるためだ。原子力発電を含めた「インフラ輸出」にも追い風となるが、後発医薬品(ジェネリック医薬品)で日本側が譲歩したことに製薬会社の一部から不満も漏れる。
「インドは戦略的に重要なパートナー。レアアース(希土類)をはじめ広範な産業協力を進めたい」。日本経団連の米倉弘昌会長は25日、シン首相を招いた昼食会でこう述べ、EPA進展を歓迎した。シン首相は「電力などインフラ開発に日本企業が役割を果たすことを歓迎する」と述べ、インフラ投資を求める考えを強調。EPAを機に原発などの発電所建設で日本企業との関係強化に期待する。
インド国内で約5割の自動車販売シェアを持つスズキは「世界との競争のスタートラインに立てた」(幹部)。インド向けに国内から部品を送っており、関税撤廃でコスト競争力が高まる。
鉄鋼業界にも朗報。7月にインド鉄鋼大手のJSWスチールとの資本業務提携を発表した林田英治・JFEスチール社長は25日の会見で「5年、10年先を見据えた意思決定をしやすい。日本企業にとって間違いなくプラス」と述べた。
一方、日本側が後発医薬品の審査の迅速・簡素化について、インド企業に対し日本企業と同様の待遇を与えるよう譲歩したことに日本の製薬業界は警戒を強める。第一三共は「インドメーカーに日本市場を奪われる可能性がある」としている。【米川直己、浜中慎哉】