最高裁の判決を受けて、熊本県知事は故溝口チエさんを水俣病認定した。
これは、最高裁という強権によって県が動いただけだ。原告代理人の弁護士は「水俣病問題は何一つ根本的な解決に向かっていない」という。自発的自浄ではなくお上に従うだけの思考こそが、泥沼化した問題の根底にある。
故溝口チエさん水俣病認定 県、最高裁判決受け
水俣病認定義務付け訴訟で、16日の最高裁判決が原告の溝口秋生さん(81)=水俣市=の母チエさん(故人)を水俣病と認めたことを受け、蒲島郁夫知事は19日、チエさんを同日付で認定した。最高裁から同日、県へ判決の正本が郵送で届き、即日手続きを終えた。
熊本県の認定患者は1783人、鹿児島、新潟両県を含む全国では2976人となった。2004年10月の関西訴訟最高裁判決をきっかけに機能停止した県の認定審査会が07年3月に再開して以降では8人目となる。
チエさんの認定の通知は、県環境生活部の谷崎淳一部長が22日、溝口さん宅へ届ける予定。チエさんの仏前に謝罪するとした知事の訪問は24日で調整している。
19日夕、自宅で支援者から連絡を受けた溝口さんは「安心した。何十年も1人で闘ってきたから」とほっとした様子。すぐにチエさんの仏前に報告し、手を合わせたという。
ただ「私だけのために裁判をしたのではないから、心苦しい気持ちもある」と複雑な表情も。また、石原伸晃環境相の会見内容について「認定基準を見直さないと言ったのは疑問だ」と語った。
原告代理人の山口紀洋弁護士は「行政がこれで終わり、と思ってもらっては困る。水俣病問題は何一つ根本的な解決に向かっていない」とくぎを刺した。
(亀井宏二、辻尚宏、鎌倉尊信)