「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成22年(2010)12月8日(水曜日)通巻3155号 を転載

もっと度肝を抜かれるウィキリークの中国指導部の赤裸々な発言
こんどは李克強副首相「中国のGDPは作為された数字、信用に値しない」

みんな知っていることだけど、国家指導者がそこまで言って良いのか?
前号では習近平のハリウッド映画大好きという「機密」を紹介したが、次なるは、その習のライバル=李克強副首相(次期首相に最有力。胡錦濤の右腕)に関する噂。

ウィキリークは当時(08年4月)の在北京米国大使クラーク・ランディの国務省宛機密電報に書かれていたことを漏洩しているが、三年前、習錦平は浙江省書記だった。このときライバルの李克強は遼寧省書記だった。
ランディ大使は李克強ともある晩、食事をともにした。

李克強はこう言った。
「中国のGDP統計は作為された数字であり、だからこそ信用できない」
(うぅーん、小誌がいつも言ってきたことだけど、最高責任者が同じ台詞を吐いていたとはお釈迦様もびっくり仰天だ)。

「あの数字がインチキなんて、なんとも驚くべきほどの率直な告白であろう」とランディ大使は打電した。「予想以上に現政治局トップらは率直であり、開かれている」という感想をつけて。

またランディ大使の機密報告には李克強(現在副首相。政治局常務委員)に関して「オフィシャルな情報に依拠せず、情報アンテナを独自に張り巡らしており、国際情勢に正確に通じている」と評価し、また「李は自由貿易と法治を支持しており、遼寧省では教育の不備、貧富の格差、スラム街の最貧なる実態に関しても精通していた」と報告していた。

「李克強の個人的趣味はウォーキングで毎日の日程に組み込んでいる」「最後の訪米は2001年のオクラホマできわめて印象深かったとも李は語った」。
チベットの暴動は胡錦濤が最高責任者だったことも判明したが政治局で胡の方針に逆らう者は誰もいなかった、とも大使は機密報告のなかで述べていた。

▲「中国は覇権を求めていない」という人為的作文の読み方

さて、この事実を把握してから次の公式発表を読むと、笑いがこみ上げてこないか。

 香港紙『明報』(12月7日)が下記を報じた。
「国務委員の戴乘国は中国は平和を目指しており、決して米国に代替するような世界覇権をもとめず、外国が中国に反対して結束する必要はない、と外交路線を発表した」(拙訳)。

戴国務委員は次のように続けた。
「中国は独特の社会主義を掲げているが対外的に社会主義を輸出していないし、経済的にも一国の繁栄ではなく世界同時繁栄を希求しており、また軍事的にも覇権を追求していない。国際的に「中国はホンネを隠している」などとする論説があるが、中国の平和路線は明白であり隠し事はなく、陰謀を企んでいることもない。トウ小平同志が言い残したように我が国は目立たず、拡張せず、覇権を求めず、ひたすら平和を願って行動しているのも中国が世界に対して責任を全うしているからだ」トサ。

資料:
宮崎正弘の国際ニュース・早読み