「A級戦犯」というのは、戦勝国主導で行われた東京裁判にて、身柄拘束された無抵抗なものたちへ一方的に貼り付けたレッテルで、ブッシュ時代に行われたサダムフセインの裁判と同様だ。日本社会にA級戦犯はいないと私は考える。少なくとも、日本人がアメリカの決定に従って、先人たちを戦犯呼ばわりするのは筋違いである。
一方、「戦犯とは戦争犯罪人のことで刑の執行が終わればもはや犯罪人ではない」という鍛冶俊樹氏の冷静な意見もある。
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第17号(8月16日) を転載
A級戦犯は存在しない
1970年代までは日本では、閣僚は総理を含めて、特定の日に伊勢神宮と靖国神社に詣でるのが恒例となっていた。伊勢神宮には左翼出身の総理も詣でる慣例が今も続いているが靖国神社には行かなくなった。中国が文句を言うからだが、日本の閣僚が日本のどこに行こうが日本の勝手であろう。中国が「伊勢神宮も侵略戦争に協力した」などと言い掛かりを付けたら伊勢神宮参拝もやめるのか?。
中国は日本の閣僚に指示を出して内政干渉をしている。これは日本に対する侵略意思を明確にしている事であって断固拒否しなければならない。
実は1970年代において、閣僚が神社参拝することは伊勢神宮、靖国神社を含めて違憲だとする憲法学説があり日本の大手マスコミもかなりこれに同調していた。あのニセ憲法に操を立てる憲法学者もどうかと思うが、左翼学説としては一応の論理性はあるだろう。
ところが中国は靖国参拝だけを問題にした。日本の左翼系マスコミはあろうことか左翼憲法学説をかなぐり捨てて中国の尻馬に乗ったものだから、閣僚の靖国参拝はいけないが伊勢参拝はいいことになってしまった。おかげで当時の村山総理や現在の菅総理は左翼出身なのにマルクスやレーニンではなくアマテラスオオミ神の前で頭を垂れなければならない羽目に陥ったのである。
つまり日本の左翼憲法学説は中国の内政干渉により崩壊したのである。これで中国に対して怒りを感じない護憲派がいるとしたら、それはもはや左翼でも護憲派でもなく単なる中国の傀儡であろう。
もちろん中国の主張が筋が通っているというのであれば日本の護憲派もまだ面子が保てる(それでも内政干渉を許した罪は残るが)。ところが中国の主張はまったく筋が通らないのである。
中国は「A級戦犯を合祀する靖国神社への閣僚参拝は認められない」という。既に表現が不正確である。これは正確にいうとA級戦犯として処刑された戦争指導者達の事だが、戦犯とは戦争犯罪人のことで刑の執行が終わればもはや犯罪人ではない。それは今入監中のホリエモンが刑期を終えて出所すればもはや犯罪人ではないのと同様である。
さて処刑された戦争指導者達はもはや犯罪人でないばかりか、国会決議により名誉回復されている。従って彼らは戦没者として扱われている。昨日、全国戦没者追悼式が天皇皇后両陛下ご臨席のもと菅総理主催で開かれた。毎年恒例の行事で戦没者の霊と書かれた塔の前で皆頭を垂れているが、この戦没者の中に処刑された戦争指導者達は当然含まれている。
つまり我々は毎年、処刑された戦争指導者を含めて慰霊追悼を天皇皇后両陛下ご臨席のもと総理主催で行っているが、中国はこれに対して一遍も抗議したことがない。となると靖国参拝を不可とする論理が成り立っていないのだ。
「お友達の嫌がる事はしません」と靖国参拝を見送った総理がいたが、中国の支離滅裂な主張は決して友達の助言などではなく、侵略者としての介入の口実である事を如実に示している。だとすれば我々は伝統的な信仰の形式にのっとり、かって日本に命を捧げた人々に感謝し、この国の将来の安全を祈願する他はあるまい。
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