北海道新聞(03/29 10:05)を転載

岩手で検視、道警・刑事部隊泥を洗い、丹念に特徴記録

東日本大震災で、岩手県宮古市に派遣されている道警の「刑事部隊」約20人が、犠牲者の検視に当たっている。仮設の遺体安置所に次々と運び込まれる遺体の中には、津波にのまれて着衣が破れたり、所持品が流されたりして、身元を示すものがないことも多い。しかし、「少しでも早く家族の元に帰してあげたい」という思いを支えに、遺体の小さな特徴も事細かに記録して、連日、懸命の身元確認作業を続けている。

紺色の作業着、目と鼻の間にほくろ-。道警の刑事部隊が活動する宮古市田老地区の遺体安置所で、遺体の特徴を記した書類を目にした40代の女性の顔つきが一変した。

道警捜査1課の警部補広西さゆりさん(38)が遺体の元に案内すると、女性は「どこかで無事でいると信じていたのに…」と泣き崩れた。遺体は女性の夫だった。

女性からは「見つけてくれてありがとう」と声をかけられたが、広西さんは「最後の希望を断ち切ったようで複雑だった」という。

東日本大震災では死者が1万人を超え、行方不明者も1万6千人を上回る。宮古市でも1400人の行方が分からない。一度に多数の人が被災しており、遺体の身元を確認するのは容易ではない。

津波で流され、携帯電話や免許証など身元につながる所持品がない場合も多い。被災時にいた場所から遠く離れた場所で遺体が見つかるケースもある。

「何としても遺体を、待ち続けている家族の元に帰したい」。捜査1課の警部前川剛さん(51)は第2陣として18日に現地入りし、検視に当たった。運ばれてくる遺体は、大量の泥にまみれていた。それをきれいに洗い流し、身長や体格、腕時計の形、ほくろやあざの一つまで特徴を書き留めた。「どんな小さな手がかりも見逃せない」。検視の前後には、必ず全員で手を合わせたという。

第2陣が活動した26日までに検視した遺体は計97体で、今後、遺体の数はさらに増えるとみられている。被災地の捜索はまだ手つかずの場所も多く、道警は今後も岩手県に部隊を派遣し、検視活動を継続する。