「水俣病終わらない」 水俣市で犠牲者慰霊式
水俣病の公式確認から57年を迎えた1日、水俣病犠牲者慰霊式が水俣市の水俣湾埋め立て地で開かれ、市民ら750人が、環境破壊への反省と被害を風化させない決意を新たにした。一方、水俣病認定訴訟で国の基準より幅広く患者と認めた最高裁判決を受け、被害者団体から認定制度見直しを求める声が続出した。
「水俣病慰霊の碑」前であった式には患者・遺族や行政、原因企業チッソ関係者らが参列した。亡くなった認定患者のうち、新たに申し出のあった4人の名簿を奉納。参列者は黙とうし、献花台に菊の花を手向けた。
患者・遺族を代表して胎児性患者の母親、金子スミ子さん(81)=水俣市=が「祈りの言葉」で、「子どもたちが生きている限り、水俣病は終わりません」と訴えた。
初参列した石原伸晃環境相は「水俣病の拡大を防げなかったことをおわび申し上げる」と述べ、10月に同市などで採択・署名の外交会議が開かれる「水銀に関する水俣条約」を契機に「教訓を積極的に発信する」とした。
蒲島郁夫知事は最高裁判決に言及し、「認定制度の総合的検討の具体化について、県も積極的に関与したい。早期に道筋をつけることで水俣病問題の解決につながるよう努力する」と述べた。
石原環境相と被害者団体との意見交換もあり、「判決を真摯[し]に受け止めるなら、認定基準を見直すべきだ」との声が続出。勝訴原告への謝罪や不知火海沿岸の住民健康調査、地域再生の促進などを求める意見も相次いだ。
会見した石原環境相は、認定審査の総合的検討について「具体化を指示したばかりで、結論のめどは立っていない」と述べた。(辻尚宏)