県は国と協議するといい、国は県から相談があれば応じるという、露骨なたらいまわしを許すな。
福岡高裁が熊本県に対して故溝口チエさんへの水俣病認定を義務付ける判決を下したのち、上告を巡って県と国は互いに問題を投げ合うような対応をした。

これは水俣という一地方の問題ではなく、日本が抱える社会問題だ。その場しのぎの政府の対応がのちに多くの命を失い、あらぬ風評が加えられ、長く苦しい泥沼の紛争と化すことになった。国を相手にした紛争はこれからも起こりうることで、水俣病患者に対する国の対応は私たち国民への対応であることを自覚し、干渉し続けることが重要だ。原発事故後から今なお続く福島県での風評被害も政府の対応とメディアが作り上げたものだ。国民に対する配慮のなさが原因といえる。

原告側は国と県に対して上告断念を求める緊急声明を発し、賛同する署名を全国に呼び掛けている。
一地方の問題ではなく、私たち一人ひとりの問題として考えたい。

熊本日日新聞 2012年03月03日 を転載

国、県へ上告断念求める 原田医師ら緊急声明発表

国の水俣病認定基準に満たない症状で認定義務付けを命じた水俣病溝口訴訟の控訴審判決を受け、熊本市の原田正純医師らは2日までに、国や熊本県に上告断念を求める緊急声明を発表した。

2月27日の福岡高裁判決について、声明は「国の基準は十分であるとはいえないと断罪し、本来認定されるべき申請者が除外されていた可能性を否定できないと言い切った」と強調。「これ以上原告を苦しめないでほしい」と訴えている。

声明には、水俣病事件に長年かかわった馬場昇・元衆院議員、作家の石牟礼道子さんら72人も名を連ねた。県の水俣病認定業務が国からの法定受託事務であるため、原告の溝口秋生さん(80)=水俣市=らが1日、環境省に声明書を提出した。

原告側は上告期限の12日まで、声明に賛同する署名を広く呼び掛ける。
問い合わせは ガイアみなまたTEL 0966(62)0810。

(石貫謹也)