「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23(2011)年12月23日 通巻第3523号を転載

北朝鮮に軍事反乱、クーデター、宮廷内訌がおきたとき
中国は40万の軍隊を派遣するというシナリオが米国防総省に存在する

『クリスチャン・サイエンス・モニター』(12月7日付け)はペンタゴンの戦争ゲーム・プランナーが考えている最悪のシナリオを報じた。このゲームプランは金正日急死の前のことである。

それらは「三つの最悪シナリオ」で構成されており、第一にパキスタンの崩壊と核拡散、第二が中国の台湾侵攻。そして第三に「北朝鮮で後継問題がもつれ、事態がさらに混乱すると内乱か対外戦争に打って出る危険性」。(詳しくは拙論(『正論』臨時増刊、金正日以後の朝鮮半島、26日発売予定)。

とくに(三)の北朝鮮不安定化を防御するために、中国が軍隊を派遣するというシナリオがあるという。
それも「米軍がイラクとアフガニスタンへ派遣した合計より多い数」。ペンタゴンは「中国が最大四十万人の人民解放軍を北朝鮮に派遣して事態の安定を目ざすだろう」と見積もった。

これをうけた形での追加報道が在米華字紙でなされた。つまり四十万の中国人民解放軍を、どうやって動員するのか?
多維新新聞網(12月21日)は次のように言う。

現在、中国軍は七つの軍管区にわかれて管理されている。
すなわち北京、瀋陽、南京、済南、広州、成都、蘭州の七大軍管区。すでに2003年に人民武装警察と交替して北朝鮮国境付近は15万の人民解放軍が駐屯している。
主力の瀋陽軍管区は合計43万の兵力によって成り立ち、その内訳は第16,23,39,40集団軍と軍管区内の遼寧省軍区に191旅団、武警117師団、120師団である。

▲いずれも朝鮮戦争のおりの主力部隊の伝統を受け継いでいる

このうち注目は第39集団軍だ。
おもに主力は遼寧省大連の裏側、営口に駐屯する。四個師団でなりたち、最新鋭の武装をしており、混成旅団ならびに機甲化部隊、陸軍航空隊、砲兵、防空旅団ならびに工兵など専門部隊が、このうちの7万5000人。この集団軍は朝鮮戦争の折、鴨緑江をこえて朝鮮半島を南下し、米軍とはげしく戦火を交えた。

第40集団軍は本拠地が錦州である。国共内戦の激戦地である。戦車隊、工兵隊などが主力である。朝鮮戦争のおり韓国軍を各地で戦闘した。
第16集団軍はおもに日本へ照準を合わせたミサイル部隊を保有し、また第23集団軍は対ソ警戒目的で黒竜江省哈爾浜に駐屯している。

このほか、北京駐在の第38集団軍は、もっとも精鋭といわれ、林彪が率いた第四野戦軍の伝統をつぐ。援朝抗美(朝鮮戦争)の際の主力軍である。

また兵力輸送、兵站を担う海軍は青島、旅順、胡廬島の三大軍港を包括する。潜水艦を多数保有し、韓国海軍ならびに在日米軍と対峙する。
ペンタゴンのシミュレーションは、これらの戦力から判断して最悪のシナリオでは40万の人民解放軍の投入が可能としているのである。

 

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