産経新聞より転載

「男の生き方学んだ」タイガーマスク特需に驚く玩具店主

児童養護施設に「伊達直人」の名で贈り物を届ける「タイガーマスク運動」の広がりを受けて、漫画やアニメに登場したマスクにも連鎖的な“特需”が起こっている。

福島県矢吹町で玩具店「トイショップウエダ」を営む上田貴規さん(48)は、タイガーマスクと伊達直人の生き方にほれ抜き、12年前からタイガーのマスク作りにかかわってきた。成形されたゴムに4色のボアでトラを表現した1万5000円の「ディスプレー用」を企画。被ることができるラバーマスク(3800円)と合わせ、原型の製作を担い、自店でも販売している。両商品とも著作権者の許可と監修を得ている。

上田さんの店では、これらの商品に「昨年末あたりから50個近くの注文が相次いでいる」という。通常、1カ月に売れるのは「数個程度」というから、今回の寄付運動から波及したといってよさそうだ。

上田さんの原型からマスクを製造するオガワスタジオ(さいたま市)も、「年間販売個数が約350個という安定した人気商品なのだが、正月明けから注文が殺到し、1週間で250個が売れた」(同社)とホクホク顔だ。

いずれもほとんどが通信販売。上田さんは「一連のニュースで“タイガーマスクの教え”が再認識されたなら、この上ない喜び」とうれしそうに語る。

では、タイガーの教えとは?

上田さんは「作品の魅力は伊達直人のやさしさとタイガーマスクの強さの二面性。男は何事も一人でやり遂げ、あわよくば人の役にも立たねばならない。漫画やテレビでタイガーに接して子供心に実感した」と熱く語る。反則技を拒絶し、生命の危機に耐えながら筋目を通して子供たちに正義を訴えるタイガーマスク。「主題歌の歌詞『フェア・プレーで切り抜けて男の根性見せてやれ』がすべてを集約してますよ」とも。

漫画連載やテレビ放映が始まったのは、上田さんが7歳だった昭和44年。まさにタイガー世代だ。作中で施設の「ちびっこハウス」に暮らす健太がマスクをもらうシーンに感動。あこがれを抱き続けてきたという。

3代目として、家業の玩具店を継ぎ、「他店にない商品を」とマスクの販売を思い立った。「当時の関連商品は顔がぜんぜん似てなくて、ファンとして腹立たしかった。それなら自分で」と挑戦した。

約8年の試行錯誤の末、マスクの原型を完成させた。「人の顔は左右非対称。そうしたリアリティーをマスクで表現するのが最も難しかった」と振り返る。

今回の現象について、上田さんは「日本人は暖かい気持ちを持っているんだなと痛感した。タイガーマスクを男の生き方の見本と思ってきたので、おそらく私と同世代の人が伊達直人の名前でプレゼントしているのではないか。心から感動している」と話している。