「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)1月6日(木曜日)通巻3182号を転載

古都アレキサンドリアのコプト協会爆破テロは中東地殻変動の予兆
エジプトの社会不安定化でアルカィーダは再び対キリスト教徒へのテロを呼びかけた

2011年1月1日、エジプトでは新年が夥しい流血によって真紅に染まった。
1月1日のミサに出席した多くのキリスト教コプト教徒は自爆テロの犠牲となった。古都アレキサンドリア、クッディシーン教会での出来事。24名が死亡、80名が負傷した。この衝撃はエジプト国内ばかりか中東全域と欧州に拡がった。

パリには25万人のコプト教徒が暮らし、ドイツにも多い。
パリのコプト教会にはインターネットで脅迫状が舞い込み、厳戒態勢にはいった。

そもそもコプト教とはなにか。
西暦貳世紀にアレキサンドリアで福音書を書いたマルコを教祖とする東方教会の流れ、離婚と再婚を認めない厳格なキリスト教で、エジプト国内の信者およそ800万人。あのガリ元国連事務総長もコプト教徒である。

世界に信者はひろがっていて西欧から豪州、日本でも鳥取県倉吉市にコプト教の日本教会がある。

地下の動きはあった。
2010年1月6日。この日はコプト教徒にとってクリスマス・イブにあたる。1月7日がコプト強のクリスマスだ。
エジプトで7人が狙撃され犠牲となった。うち6人がコプト教徒だった。

同年6月に「ハーリド・サィード事件」がおきた。イスラムからコプト教徒に改宗したハーリド・サィード青年が麻薬取り締まりと称した警官に殴り殺された事件だ。イスラムからほかの宗教への改宗に、イスラム過激派は寛容ではない。
コプト教徒らは立ち上がって抗議した。

同年10月31日、場所はイラクの首都バグダッドの中央部にあるキリスト教教会。
アルカィーダが人質をとって立てこもり、改宗したムスリムに死刑を、キリスト教徒を殲滅せよなどと叫んで銃撃戦となり、51名が死亡した。

同年11月24日、カイロ近郊でモスク建設をめぐりイスラム教徒とコプト教徒が衝突、暴力的なデモにより二人のコプト教徒が殺害され、150名が逮捕された。

1日のアレキサンドリアにおけるテロに抗議して首都のカイロなど各地で抗議デモが発生し、エジプト最大の「ムスリム同胞団」は冷静、秩序回復をよびかける一方で「この社会不安の元凶は貧部の差、不公平をもたらしたムバラク政権だ」と批判した。

抗議デモにはコプト教徒のほか若いムスリムも加わり、百名以上が検挙された。エジプトの評論家はムスリムがデモを驚倒したことは「歴史の皮肉」と評した。

明日、1月7日はコプト教のクリスマス・イヴ。中東全域から西欧諸国は厳戒態勢に入った。
おしりも5日、イラクには過激派のサドル師が帰国した。ナイジェリアではイランから出荷されエジプトのガザへ向かうとされる大量の武器が見つかった。

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