「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成23年(2011)1月4日(火曜日)通巻3179号<新春特大号>を転載

中東でまた戦争が回避できない情勢に陥った様相
オバマの調整能力が低く、トルコが政治発言力を強め、イランは軍事大国に

調停不能の状態。イスラエルとパレスチナの不和は、つぎの紛争勃発が予兆される状況になった。オバマ米大統領には前ブッシュ大統領よりも政治能力とくに中東の調整力が失われている。
一方で経済成長めざましいトルコが政治発言力を強め、イランは軍事大国になりつつある。イランの核武装は、否応なくサウジ、湾岸諸国の不安を高める。

「ナイル河以東からインダス河以西にかけて米国は政治的強迫観念に取り憑かれ」(英誌エコノミスト、1月1日号)、そのため過去十年間に米国は一兆一千億ドルをイラク、アフガニスタンの戦費に費やした。
イスラエルには過去一年だけでも270億ドルもの軍事支援を注ぎ込みながらも成果はまったく芳しくない。

イラクは多くの犠牲をだして、民主化らしき政権が誕生したものの、それは米国の思惑をはずれてイランに理解をしめし、トルコは政治発言力をたかめるほどに経済成長をなしとげ、サウジは親米姿勢をとりながらも、独特の外交を展開した。

頼みのエジプトはムバラク政権の老衰、過激派の跳梁跋扈が顕著となり、古都アレキサンドリアではキリスト教会が爆破テロに襲われて数十の死傷者がでるほどに治安が悪化した。

つまり中東全域において親米政権、親米勢力が激減し、イスラエルは孤立を深めている。
レバノンに蟠踞する「ヒズボラ」はイランとシリアの支援をうけて、地域内に五万発のロケット砲を配備しているとされる。これはイスラエルの生存を脅かす

▼テロリストが勢力を挽回しつつある

ガザを暴力で支配しようとしたテロリスト組織の「ハマス」も勢力を挽回、エジプトの地下組織が息を吹き返した。
さらにエジプト国内にはファタの組織が復活している。

「ヒズボラはイランとシリアから供与されたゼルザラ!)型ミサイル(射程200キロ、爆薬600キロを装填可能)を保有し、ガザのハマスはロシア製コルネット・ミサイル(誘導巡航型)を装備した」(同エコノミスト誌)。

他方、米国では議会のイスラエルロビィは健全とはいえ、影響力低下は目に見
えている。
理由は米国が中東に依存する石油は10%であり、死活的利益の対象であるという論理はもはや説得力を欠く。アメリカ国民の大多数にとっては毎日支払うガソリンの価格のほうに関心があり、外交目標とか世界の秩序とかには、さほどの関心がなくなった。

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