「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010)12月16日(木曜日)通巻3165号を転載

マナス米軍基地排除でも中国は陰謀をめぐらしていた
キルギス高官を買収し、米軍基地撤去を交換条件とウィキリーク

キルギスから米軍基地を追い出す陰謀があった。ウィキリークが漏洩した米国外交文書から。

2009年、駐キルギスタン米国大使館外交公電では「中国がキルギスタン政府を買収し、同国内マナスにある米空軍基地を閉鎖させようと工作していた。米国大使が駐ビシュケク中国大使を詰問すると大使はひどく動揺し事実関係の否定に必死となった」とある。

クラスファイ「09BISHKEK135」の内容は米中両国大使の面談記録である。
駐キルギスタン中国大使の張延年は09年2月13日に米国大使と面談。中国はキルギスタン政府に30億ドルの経済支援を行う見返りに、同国のマナス米空軍基地の閉鎖を求めた事実関係を問い詰めた。

すると「中国大使は明らかに動揺し、一時、流ちょうなロシア語で二の句が継げず、補佐官と中国語で打ち合わせしたのちにロシア語能力を回復させ、『それは事実無根であり、中国は米軍のマナス空軍基地の使用を尊重・理解している』と釈明につとめた」。

さらに米大使が問い詰めると、いきなり中国大使はすり替え議論を展開し、「グアンタナモ米軍基地に収容されていた17人の『囚人』が釈放されたのは、中国への非友好的な行為であり、これらの『囚人』がドイツに難民として保護されたとの報道に(中国への)パンチである」と応酬した(ここで中国の言う『囚人』とはウィグル人のタリバン容疑者。グアンタナモ基地で取り調べの結果、テロリストの容疑が晴れ、米国いがいの国々へ事実上の亡命を西側諸国に打診していた)。

「中国大使はキルギスタンの一部の政府関係者が米ロの影響力を牽制しようとする目的で中国にも同国での軍事基地の設立を提案した」と意外な発言を追加した。
しかし「中国側は軍事基地に興味がない」と大使は強調した。「我々にとって、ここには軍事的あるいは政治的な優勢がない。だからマナス米軍基地を閉鎖させるために30億ドルを費やす必要がない」と結語した由。

米大使のコメント。
「面談中、心理が攪乱した所為か、中国大使は何回か中国国内の経済状況、数百万人の失業者、社会混乱が連続すれば革命が勃発する可能性すらあるとした。社会不安に言及するのは中国の外交官にとってタブーであり異例な発言だった」と結んでいる。
 
 
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