北朝鮮は貧しい弱小の国だから中国にお世話にならないとやっていけない。属国のようなものだという意見をよく耳にする。実際はその逆ではないか?旧ソ連と中国を天秤にかけながらたくましく生きてきた国だ。か弱い日本外交の物差しでは計れないだろう。

目標達成のためには手段を選ばず成し遂げてきた
中国側の朝鮮自治区にいた朝鮮系アメリカ人を、「不法に入国した」として拉致してピョンヤンのホテルに軟禁し、アメリカとの対話を実現した。当時出てきたビルクリントンは民間人とはいえ元大統領で妻は現職の国務大臣だ。民間人としては最高峰の人材を引き出したといえる。今回の韓国への砲撃は後継者固めに国内を纏めるためとも言われている。アメリカは中国に仲裁させようとし、中国はアメリカの態度が悪いからこうなったという。要するに北朝鮮に翻弄されているのだ。

この流れで米韓合同で北朝鮮攻撃もできる
だが、その数日前に北朝鮮は核開発の実態をアメリカ側の関係者に報告している。かねてからアメリカは北朝鮮に対して、核放棄すれば支援をすると約束している。

中共が先手を打って北朝鮮に侵攻
米韓に北朝鮮を取られては困る中共が先手を打って北朝鮮に侵攻することも十分あるが、仮に中国と北朝鮮が戦争状態になっても、アメリカとすれば核放棄という条件を満たしているので公約である「支援」はできるのだ。

中朝戦争が現実味を帯びている
私はかねてからこの事態を想像していたが、中国は多大な犠牲を強いられ、共産党体制の崩壊に至るだろうと推測する。もちろん北朝鮮の金ファミリーの権威は消滅するが、その覚悟さえできれば中共とは対等に戦える。まず、中国と紛争を抱えている大国インドやモンゴル、ベトナムやフィリピンなど、中共にストレスと脅威を抱える国々を味方に付けることができる。インドやモンゴルは時を合わせて過去最大の軍事演習をし、近隣の人民解放軍の身動きを封じる。北朝鮮の工作員は中国内の少数民族に呼びかけて大規模な暴動を起こす。また、武器を供与している中東のテロリストたちも反中共活動に動員できる。

経済力のある軍区は戦争などしたくない
もはや北朝鮮は対中共戦争に核兵器など必要としていない。数発のミサイルを上海に落とすだけでよい。まず富裕層が海外に逃亡し、外国企業は撤退する。残されたのは貧しい労働者と広東軍だけで、経済活動は停止する。広東軍はできるものなら戦争には参加したくないだろう。経済力のある地方は皆そうだ。北朝鮮との戦争当事者は瀋陽軍だけである。だがその中に朝鮮自治区という北朝鮮の領土があるのだ。

可能性を想像すれば更に多くのことが考えられる。

宮崎正弘さんのメルマガを転載したい。

宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成22年(2010)11月25日(木曜日)通巻3145号 を転載

北朝鮮に影響力のある中国の説得に期待? 金親子の暴発を防げるのは中国?日本マスコミの北京への過剰というより、ありえない期待を書くのは何が理由だろう

おかしな分析と報道をしている。ほぼ全てのマスコミである。
北朝鮮の暴発を防ぐには中国に、その影響力を行使して貰おうとばかり、勝手な期待を寄せているのだ。

不思議な話である。
江沢民も胡錦濤も習近平もいの一番の外遊先に平壌を撰んだ。ことし五月、突如中国を訪問した金正日は、北京で重要な会合をドタキャンして列車で瀋陽へ向かった。中国共産党が激怒したらしいが、怒りの表明はなかった。

八月にも金正日は中国に現れ、遼寧省から吉林省を訪問した。滞在先の長春へわざわざ飛んで行き、金将軍様に挨拶したのは胡錦濤だった。あべこべだろう。
とくに中華世界の秩序から言えばあり得ないことだ。皇帝が朝貢してくる王様に挨拶に行くだろうか?

82年、中国は外交謀略を用いて天皇皇后両陛下の訪中を要請し、宮沢政権はこれに応じて世界に赤恥を曝した。江沢民は訪日したときに宮中晩餐会に人民服を着用して、ふんぞり返った。習錦平はごり押しして拝謁を強要したが、天皇陛下の前で傲岸にふんぞり返った。つまり、これが中国の伝統的な「官場」政治の見せ場であり、皇帝のふるまいを王様(王権を北京皇帝が授与する図式)に見せつけなければ、天命の天子とは言えないからである。

ところが胡錦濤がわざわざ長春に現れた金正日のところへ挨拶に行ったのだ。どちらが宗主国で誰が皇帝なのか?

ここまで中国が手を焼く理由はなにか?
簡単である。核兵器である。北朝鮮の核は突如、北京へ向かうこともあり得るシナリオであり、核兵器を北朝鮮が保有した以上、北京はキッキュウジョとして謙(へりくだ)りだしたのである。
こうした物事の本質が日本のマスコミでは理解されていないようである。