「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010)10月30日(土曜日)通巻3119号を転載
温家宝首相への突き上げ、かなり深刻な様相。人民日報が三回連続で批判
日本との首脳会談拒否は保守派、左翼連合vs改革派との壮絶な闘争渦中
人民日報が三回連続で「政治改革」を推進する温家宝首相を、名指しはしないが批判している。
毛沢東主義の復活などと、アナクロなことを中国国内で共産党の特権から落ちこぼれた理論左翼が獅子吼しているのは拝金主義で革命の歌を忘れた主流派、とくに市場経済を崇拝するかのような改革路線をひた走る温家宝首相への非難が目的である。
これは中南海の奥の院で熾烈につづく権力闘争、次期首相には李克強副首相を胡錦濤と温家宝とで推薦する段取りだったが、その取引に習近平の軍事委員会副主席入りを渋々承認したとみられた矢先、つぎの首相争いは李克強にくわえて王岐山と薄き来が勢いよく参入してきた。
この列に広東省書記の王洋もなんとか離脱せずくっついてはいるが、薄との実力の差は明瞭となった。
つまり団派(共産主義青年団)は劣勢に転じ、太子党は、勢力バランスの変化をみている。
野心家の薄き来(重慶書記)が首都復活をかけて、捲土重来を期す武器は毛沢東主義復活を訴える左派、とくに新左派と呼ばれる、超党派グループとの連携である。だから彼は重慶に中国最大の毛沢東像を建立したのだ。
温家宝は、こうした左派グループの突き上げに遭遇し、いま日中首脳会談どころではないのである。会ってしまえば菅直人に強硬ポーズをとらざるを得ず、会わない方が、保守派にもいい顔が出来るという計算が作用している。
日中首脳会談を中国が拒否というニュース、裏側を読むと、日本にとってマイナスではないだろう。