くまにちコム 2012年02月27日 を転載

国の水俣病認定基準を否定 溝口訴訟控訴審判決

水俣病の認定審査に必要な病院調査を放置され、棄却処分となった故溝口チエさんの次男秋生さん(80)=水俣市=が、熊本県による処分の取り消しと認定義務付けを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は27日、請求を退けた一審の熊本地裁判決を取り消し、県にチエさんを水俣病と認定するよう命じた。

判決は、複数の症状の組み合わせを必要とする国の水俣病認定基準について「十分であるとは言い難い」と指摘。感覚障害だけの被害で水俣病と認定し、国の基準の妥当性を否定した。

国の基準を否定し、県に水俣病認定を義務付ける判決は、2010年7月の大阪地裁に続き2回目で、高裁では初めて。現行の認定基準の見直しを求める声が再燃し、7月末に申請が締め切られる水俣病特措法など被害者救済の在り方が問われることになりそうだ。

判決理由で、西謙二裁判長は「メチル水銀に対するばく露状況、生活状況等を総合的に考慮することにより、水俣病と認める余地がある」と判断。旧環境庁が1977年に通知した判断条件による認定基準について「本来認定されるべき申請者が除外されていた可能性を否定することができず、判断条件が唯一の基準として運用されたことは、適切であったとは言い難い」と批判した。

県の処分が遅れたことについては「手続きの瑕疵[かし]ではない」とした。

チエさんは74年に認定申請し、77年に死亡した。県は17年後の94年、生前に受診していた病院を調べたが、既にカルテは消失していた。申請から21年後の95年に棄却した。

溝口さんは01年12月に提訴。08年1月、熊本地裁は「水俣病と認める証拠がない」として、請求を退けた。(小林義人)

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