このニュースの要点は、訴訟取り下げではなく、それにあたって38年間の県側の対応を批判したことだ。
審査会が水俣病認定したため、県に対する認定訴訟を取り下げただけで、決して県との和解ではない。県側の対応を「これでは救済に値しない」と批判し、国の水俣病認定基準の見直しなどを訴えたうえで、訴訟を取り下げた。
水俣病が残した課題は多く、今なお続いている。

くまにちコム 2011年07月26日 から転載

県への訴訟取り下げ 水俣病認定の川上さん夫妻

水俣病関西訴訟の原告団長の川上敏行さん(86)と原告の妻カズエさん(84)=大阪府東大阪市=が、熊本県による患者認定を求めた行政訴訟の口頭弁論が25日、熊本地裁(片山昭人裁判長)であった。夫妻側が、6日付で認定されたため訴訟を取り下げた。

県側も同意し、訴訟は2007年5月の提起から約4年ぶりに終結した。

弁論で夫妻側は、認定まで38年かかった県側の対応を「これでは救済に値しない」などと批判。認定の理由を明らかにすることや国の水俣病認定基準の見直しに取り組むことなどを訴えた上で、訴訟の取り下げ書を提出した。県側も取り下げに同意、片山裁判長が「本件訴訟は終了しました」と述べた。

夫妻の認定申請は1973年。認定審査会が「所見間の矛盾」などを理由に答申を見送り、処分は「保留」状態が続いた。一方、夫妻は84年、関西訴訟に参加。04年の最高裁判決で被害が確定した。

再検診を求める県に対し、検診に不信感を抱く夫妻側は拒否。今年に入って夫妻側が検診に応じ、審査会が5月に再審査し、蒲島郁夫知事に「認定相当」と答申していた。(石貫謹也)