水俣病患者の認定基準が定まらず難航してきたが、近年の政府対応によって未完全ながらも大きく前進した。
だが、その後の原因企業チッソとの補償協定に関しては別問題になっている。水俣問題が収束に向かっているという報道が続いているが、多くの被害者は高齢に達しており、補償分野における不完全な問題は継続されるだろう。法的解決は公に報道されるが、個別の補償においては社会の関心が薄れ、やがて風化されていくのか。この水俣病を通じた大きな問題は、社会的教訓として今後も末長く語り続けていくべきだ。
行政訴訟取り下げへ 水俣病認定の川上さん夫妻
水俣病関西訴訟の原告団長、川上敏行さん(86)=大阪府東大阪市=夫妻が熊本県から患者認定されたのを受け、夫妻の代理人は14日、県の認定を求め熊本地裁に起こしていた行政訴訟を取り下げる意向を明らかにした。
夫妻の代理人、中島光孝弁護士によると、判決より先に県が認定したことで訴訟を続ける必要性がなくなったため。25日に予定していた医師証人に対する県側の反対尋問を中止し、夫妻側が訴訟の取り下げを陳述する。
被告の県が同意すれば、訴訟はその場で終結する見通しだが、県水俣病審査課は「正式に聞いていないのでコメントできない」としている。
中島弁護士は、関西訴訟勝訴後に認定された原告に対し、原因企業チッソが補償協定適用を拒否している問題について「夫妻は高齢で新たな交渉は困難」として「現在のところ請求は考えていない」との方針を示した。
夫妻は2007年に提訴。1973年の認定申請に対し「保留」が長く続くことの違法確認のほか、認定基準の誤りも訴えてきており、中島弁護士は「認定以外の部分も決着をつけたかっただけに、取り下げは残念」と話した。
(石貫謹也)
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