鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第155号 (7月24日)
集団的自衛権と戦争
安倍内閣の支持率が急落したという。それはそうだろう。左派系メディアの「明日、戦争が始まる」とか「徴兵制が復活する」といったネガティヴ・ャンペーンを毎日聞かされていたら、普段、外交や安全保障に関心を持たない一般国民は何となく不安を感じてしまうであろう。
勿論、不安を感じさせる状況にあることも事実だ。ウクライナで旅客機が撃墜され、イスラエル軍はガザに侵攻し、北朝鮮はスカッドを連発する。だがこれらは安倍総理が集団的自衛権を一部容認したから起きた訳ではない。
戦後秩序は米国によって支えられてきた。これを「アメリカによる平和」すなわちパックス・アメリカーナと呼ぶが、米国が軍事介入して警察官役を買って出ることで、良くも悪くも秩序が維持されてきた。
だがイラク戦争では米国は世界中から非難された。ならばもう軍事介入しないぞと登場したのがオバマ政権だ。警察が決して来ないと分かれば町は無法状態になるように、米軍が介入しないと分かれば、たちまち世界は無秩序状態という訳である。
だが、その米軍の首に縄を付けたのが安倍総理だ。集団的自衛権とは互いに助け合うことであり、日本もパックス・アメリカーナに協力するから米国も引き続き東アジアの平和維持に尽力せよと約束させた訳だ。
今月1日に安倍内閣は集団的自衛権一部容認に関する閣議決定をした。10日に米国務長官のケリーは北京で習近平主席と戦略対話に臨んだ。同日、米上院は南シナ海、東シナ海における中国の拡張主義を非難する決議を採択した。
15日に中国は南シナ海における石油掘削作業を中止した。この掘削作業はベトナムと深刻な対立を引き起こしていて、もし継続されていれば戦争に発展することは確実な情勢だった。
このように見てみると安倍内閣の集団的自衛権を容認する姿勢は、戦争を引き起こすどころか、逆に戦争を未然に回避する働きをしている事が一目瞭然で分かる。マスコミがこの安倍総理の快挙を伝えず、イスラエル軍のガザ侵攻という今まで何度も繰り返されている戦闘を事新しげに報じているのは如何なる訳か。
要するにマスコミは平和より戦争が好きなのである
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軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。
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