水俣病患者の姿を後世に 8ミリフィルム発見
水俣病の原因企業チッソを内部告発した新日本窒素労働組合(新日窒労組)が胎児性患者の日常や補償を求める被害者の闘いなどを撮影した8ミリフィルムが、同労組の旧蔵資料から見つかった。資料整理した熊本学園大水俣学研究センターは「当時の患者の姿を伝える映像は少なく貴重な記録」としている。
同労組の「8ミリグループ」だった故緒方政美さんや故鬼塚巌さんら約10人が撮影。1968年1月、新潟水俣病1次訴訟の原告・弁護団が水俣市を訪れたときの映像には、水俣病患者家庭互助会の中津美芳会長らとの対面や、支援者らが水俣駅で出迎える場面が収められている。
同労組が患者支援への転換を掲げた「恥宣言」の7カ月前。元執行委員長で、鬼塚さんたちと8ミリの映写会を開いたことがある山下善寛さん(72)=水俣市=は「早くから水俣病に目を向けないといけないとの意識があった」と話す。
別の8ミリには、患者支援組織「水俣病対策市民会議」(後の水俣病市民会議)が企画し、70年7月に制作した記録映画「怒れない世界」も。上村智子さんが食事する様子など胎児性患者の日常生活や、公式確認のきっかけとなった「第一号患者」の田中実子さんが座った映像が含まれる。
62~63年の労働争議「安賃闘争」の10周年記念で同労組が作った記録映画には、川本輝夫さんや坂本フジエさんら患者と組合の交流会も残っている。「安賃闘争で組合員が不当逮捕され、記録を残すことが大事だと考えるようになった」と山下さん。
これらの8ミリは組合活動の映像を入れて約1時間に編集。同センターが28日、熊本市西区のくまもと森都心プラザで開く同労組機関紙の復刻版刊行完結の記念シンポジウムで上映する。上映は正午、シンポは午後1時。
(鎌倉尊信)