福島の原発事故以来、「反原発」を訴える声が高まり、ついに政府は浜岡原発の中止まで踏み込んでいる。
反対を主張する理由にも一理あるが、その対案が見当たらない。エネルギーの供給を減らした場合の経済的打撃は大きく、今後の経済復興の足を引っ張ることになる。事故の原因は把握できたのだから、それを改善し、さらに優れた施設建設に進むべきではないか。それが技術大国日本の誇りではなかったか。今回の事故をふりかえり、真摯にそう考える。

そうしたなか、京都大学の村田幸作 農学研究科教授の研究グループは、海洋バイオマスからバイオエタノールを生産する技術を確立したという。国内のエネルギーと環境問題、海洋開発と新規雇用の促進という、素晴らしい夢のような可能性を生み出した。今後の展開に大きく期待を寄せるところだ。

マイコミジャーナル
京大、海洋バイオマスからバイオエタノールを生産する技術を確立 を転載

京都大学の村田幸作 農学研究科教授の研究グループは、食料との競合や環境問題を引き起こさない海洋バイオマス(多糖:アルギン酸)からのエタノール生産技術を確立したことを発表した。同成果は、2011年度日本農芸化学会大会でトピックス賞を受賞した(東日本大震災のため学会中止・発表中止)ほか、エネルギー・環境関係の専門誌「Energy&Environmental Science」に掲載された。

化石燃料代替エネルギーの生産や地球温暖化問題の低減を目的に、デンプンやセルロースからのエタノール生産が世界各地で検討されているが、陸上のバイオマスを原料とした場合、その供給量、運搬、食料との競合性、さらにはセルロース分解時の環境負荷などの諸問題が解決されていなかった。そこで研究グループは、陸から海に視点を移し、海洋バイオマスからエタノールを生産する技術の確立を目的に研究を行った。

その結果、褐藻類の主成分であるアルギン酸(乾燥藻体の30~60%を占める。構成単糖:ウロン酸)からのエタノール生産技術を確立した。具体的には、体腔形成能と強力なアルギン酸代謝能をもつスフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌A1株の細胞改造と培養工学的解析により、アルギン酸からのエタノール生産を可能にした。好気培養下、2~3日間で13g/Lのエタノールの生産が可能であるという。

これにより、海洋バイオマス利活用の学術的基盤が構築されたこととなり、同技術は、日本のエネルギー問題と地球温暖化問題の低減、海洋開発と新規雇用の促進などの社会的な影響を与える可能性があると研究グループでは説明している。

なお、体腔(細胞表層に形成される開閉自在の孔)は、低分子物質から高分子物質まで呑み込む巨大な器官であるが、同器官の機能を応用することで、ダイオキシン分解、各種バイオマスからのエタノール・ブタノール・プロパノールのようなアルコール燃料、さらには他の有用物質生産への展開が可能となるという。

 
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京都大学 海洋バイオマスからバイオエタノール生産