「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010)10月25日(月曜日)通巻3111号 より転載

中国の「反日デモ」に息切れ。
いずれも見物人は多いが実際の参加者は少数
胡錦濤政権は早期収束に躍起。
日本の反中国デモを脅威視しはじめた

23日に四川省徳陽で散発的な「反日」デモがあったが、NHKと産経新聞の記者が拘束され、「何もなかったと報道せよ」と言われ、二時間後に市街で退去命令。しかしフジテレビなどは、対面のホテル高層階からの中継に成功した。

見物人が多く、集会場所にあつまっている「市民」は私服がおおい。付和雷同組はデモが面白くなれば参加して暴力行為をはたらこうかと虎視眈々。だが徳陽も十六日に暴動となった綿陽市と同様に日本人は殆どいない。

地図をみると徳陽は成都から東北へ五十キロ。十六日に「反日」を掲げて暴徒化した綿陽の手前の街で、やはり部品メーカーなどが蝟集する。失業率が高く、震災被害から立ち直っていない。
市民の不満は、日本ではなく政府の腐敗、共産党への憎しみであり、反日はきっかけでしかない。

24日の反日デモは甘粛省蘭州、湖南省長沙、江蘇省南京、河南省開封で、すこし動きがあったようだが、西安と徳陽では中学ならびに大学生に「外出しないよう」にとの通達がだされて、デモはなかった。警察の圧倒的配備を前にデモ首謀者も「まずい」と判断したのだろう。
長沙の大学では校門に外出の理由を聞く「検問所」が設置された。

甘粛省蘭州のデモには「収回琉球」(沖縄奪還)のプラカードはなく、「環我釣魚島」(尖閣を返せ)など過激さもトーンダウンしており、南京のデモはわずか百名、三十分で解散した。(香港『明報』新聞網、10月24日)

▲当局は中国メディアに「報道するな」と命令

中国共産党宣伝部が報道に関して下の「指針」をマスコミに通達していたことが分かった。
共同通信(18付け)によれば「 中国共産党宣伝部の対日報道指針」とは、
▽中国国営通信である新華社通信外には反日デモを独自に報道してはいけない。
▽日本の右翼勢力関連報道は中国外交部の見解をもとに報道する。
▽中国内の反日デモ、日本内の反中デモは1面のように注目度が高い面では報道しない。
▽日本関連突発事件は各メディア幹部の指示を受けて処理する。
▽その他、日本関連報道は新華社通信の記事だけ使う。

上記の通達が出されたため、2010年10月18日以後、中国のメディアは一切、反日デモの報道をしていない。

その結果、米国を中心とする華字紙は、なんと日本のメディア報道を転載しているのである。
とくに面白いのは博聞新聞網(24日付け)で、日本の反中国デモは東京集会が「4000人」と報じた。24日に高松で行われた集会のニュースも報じている。
日本大使館が駐在日本人に外出を控えるよう通達したこと。領事館周辺もものものしい警備がおこなわれている様子も華字紙は報道している。

さて、中国における「反日デモ」を中国メディアは報じない。だから海外華字紙は日本のメディアを通じて二次報道をしている。

日本における「反中国デモ」を日本のメディアは報じないが、欧米メディアは報道し、華字紙も大きく報道しており人数も割合と正確である。
いったいどうなっているのだろう、中国の報道規制は独裁国家だか当然だが、自由なはずの日本のマスコミは?